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島崎七生人しまざきなおと

開発者直撃インタビュー “キャラ変”でSTIの操縦性と高級車の乗り心地を「スバルレヴォーグ」編

“キャラ変”でSTIの操縦性と高級車の乗り心地を「スバルレヴォーグ」編
“キャラ変”でSTIの操縦性と高級車の乗り心地を「スバルレヴォーグ」編

その細やかな観察眼では業界一、二を争うモータージャーナリストの島崎七生人さんが、話題のニューモデルの気になるポイントについて、深く、細かくインタビューする連載企画。第8回は10月15日に正式発表予定の新型スバルレヴォーグを手掛けた、株式会社SUBARU商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの五島 賢(ごしま さとし)さんに話を伺いました。

旦那さんは欲しいけれど

旦那さんは欲しいけれど

写真:島崎 七生人

島崎:事前に見せていただいた解説ビデオの中で五島さんが真顔で“キャラ変”と仰ったのはインパクトがありました。どういう意味が込められているのですか?

五島:元々“SIドライブ”を載せていましたが、セールスやお客様に聞くと、なかなか使わないという話がありました。Iモードで走っていても踏めば加速するから使わない、と。それでは勿体ないので、ならばいろいろなデバイスを組み合わせて変化の幅をもたせよう……と考えました。

もうひとつ、レヴォーグはスポーツ系のクルマで、旦那様は欲しくてしょうがない、でもご家族からは乗り心地が悪いといった声もあった。そこで、スポーツならSTIを彷彿とさせる操縦安定性をもたせ、コンフォートならご家族全員にご満足いただけるような、今までのスバルになかったような高級車のような乗り心地にする。1台で複数のキャラクターをもつクルマにしたい。そんな思いを、少しやわらかめに申し上げたのが“キャラ変”でした。

島崎:やわらかめに仰ったのですね(笑)。でもそれでレガシィを凌駕してしまってもいいのですか?

五島:国内では事実上はフラッグシップの位置づけで上は考えなくてよいと。アウトバックは北米中心の性格、セッティングのクルマである一方で、レヴォーグは全幅も1795mmに抑えて、国内専用開発ということですし。

島崎:だから乗り味も幅を持たせたセッティングを実現させた、と?

ドライバーごとの設定をすぐに呼び出せる“インディビジュアル”

ドライバーごとの設定をすぐに呼び出せる“インディビジュアル”1

五島:ええ。それと群馬(注:スバルの本拠地)などで典型的なのは、大きなクルマと軽自動車の組み合わせが多いのですが、大きなクルマはご家族のどなたも運転される。

そうした時に今回は“インディビジュアル”の設定で、ドライバーモニタリングシステムのカメラで顔を判別、ハンドルの★マークのお気に入りボタンを押していただくと、その人の好みの設定がスグに呼び出せるようにしました。ダンパーはコンフォートだけどステアリングは重めで……といったことや、エアコンの最後にその人が設定したモードも呼び出せる。ドライバーに合わせたパーソナライズされた設定が簡単に呼び出せる、といったこともやっています。

ドライバーごとの設定をすぐに呼び出せる“インディビジュアル”2

島崎:インディビジュアルモードは、今までありましたっけ?

五島:いやいや、なかったです。ドライブモードセレクトを入れたから、今回、実現できました。

島崎:他車でも同じモードを搭載する例は見られますよね。

五島:ええ。ただお一人で乗られても、ワインディングで“スポーツ+”、街中で“コンフォート”と切り替えて使えますが、コンフォートでも電制ダンパーの加速度でフィードバック制御しますので意外にしっかりしていたりする。なので要はお好み次第でも組み合わせが選べるモードです。

島崎:いずれ広報車をじっくりお借りできたら試したいですね。

“頭が冴える”エアコンのマイルドモードはお肌乾燥対策にも!?

“頭が冴える”エアコンのマイルドモードはお肌乾燥対策にも!?

五島:ぜひ。それとモードということでは、エアコンの“マイルドモード”も工夫しました。これも女性向けで“足元が寒い”の声にお応えして頭寒足熱ができるのと、湿度センサーを積んでいるので、内気循環を積極的に行って湿度を一定に保ちながら窓が曇りそうになったら外気を導入するようにしました。冬場は上から冷風を出すようにしています、そうすれば頭が冴えるというか(笑)。

島崎:僕も乗るべきかもしれません。

五島:乾燥感の低減、本当は“お肌に優しい”といいたいところですが、言い過ぎになってもいけませんので(笑)。

島崎:仰ればいいのに。

五島:本当に効果があるのか議論になってもいけませんし、人により効果に差もあると思いますので……。

スポーツ+は後輪にも予めトルク配分している

スポーツ+は後輪にも予めトルク配分している

五島:そうそう、先ほどお話したドライブモードセレクトのスポーツ+の制御に関してですが4駆の制御技術のACT-4も進化させました。アクセルオフでもトランスファーの伝達トルクを与えることによって、後輪が前輪と直結しているかのような動きをさせるものですが、従来はトランスファーのクラッチを切っていたものを、今回は始めから後輪にもトルクを与えておくようにした。なのでアクセルを踏んだ瞬間に前後輪が一気に動き出す。

雪の上の脱出性や、アスファルトの上でもコーナリングでボディ剛性が高くリヤにもトルクをかけてやれるので、フロントのコーナリングフォースがより使える状態になり、4WDなのにヨーで回れて、出口では4輪でダッシュできる。回頭性、スポーツ性もより向上させています。

島崎:いろいろと突き詰めているんですね。

五島:はい。今回は「オジサンの時代じゃないんだから」と若手にがんばってもらいながらまとめました。

島崎:時代は進んでいるんですね。

アイサイトXはお買い得価格!

アイサイトXはお買い得価格!

五島:とはいえスバルのグランドツーリング思想は大事にしました。初代は“革新スポーツツアラー”で出したのですが、新しさが求められ、アイサイトのver.IIIも最初に入れた。だから視界や居住性などスバルらしさは継承した上で、初代を超えるような革新をやろうがコンセプトでした。

新型は先進安全、スポーティ、ワゴン価値を3本柱にし、その中でブレーキアシスト、衝突回避性能はベースグレードからすべて格段に上げる、アイサイトX、いわゆる運転支援はどのグレードでもお選びいただけて自動車専用道路では未来のドライブがご体感いただける……としました。大画面のナビとセットオプションの価格で35万円ですが、ナビだけでも20数万円なのでかなりお買い得かと考えています。

島崎:かなり充実した内容ですね。

五島:そうですね。価格帯も先代のレヴォーグ並になるべく抑えてやっています。

ツルッとしたクルマはスバルではない

ツルッとしたクルマはスバルではない1

ツルッとしたクルマはスバルではない2

島崎:ところでスタイリングについては何かありますか?

五島:2018年のジュネーブショーに出した“ヴィジヴ・ツアラー・コンセプト”のイメージをそのまま量産車にもってきました。スバルらしさ、継承の流れに乗りつつ進化させるのが狙い。今どきフェンダーの出っ張りをアピールするクルマは少ないと思いますが、そこはレヴォーグらしく、大地を掴んでAWDで走る逞しさを表現しました。ツルッとしたクルマは多いですが、それではスバルの方向性とは違うんじゃないか。

ツルッとしたクルマはスバルではない3

シーケンシャルウインカーも流行っていますが、水平対向のピストンを象徴した“コの字”がウインカーのほうがスバルらしくていいんじゃないかと、ヘキサゴンのグリルとともにキープしています。キャラクターラインも今までのスバル車では1番シャープなカドRを使っています。コンセプトカーは全幅が1900mmあったので、さすがにそのままでは無理でしたが、コンセプトカーのイメージをかなり持ち込めたと我々としては思っています。実は運転席の着座位置は少し上げていて、見晴らし、視界のよさも大事にしています。後席も前席との間隔を25mm広げ、エアコンの吹き出し口も付けました。

リアクォーターウインドまで延びたモール、キレイに揃った表示パネルの向き

リアクォーターウインドまで延びたモール、キレイに揃った表示パネルの向き1

初代レヴォーグのサイドビュー。リアクォーターウインドにはモールがなかった

リアクォーターウインドまで延びたモール、キレイに揃った表示パネルの向き2

新型レヴォーグはリアクォーターウインドまでモールが延ばされスッキリとしたウインドウグラフィックとなった

島崎:サイドウインドゥ下のモールも、ついにリアクォーターウインドまで延ばしていただきましたね。

五島:初代の時は成形上の絞りの限界であそこがどうしても作れませんでした。先代のPGMは外装設計のスペシャリストでしたが、彼をもってしても無理だった。今回はそのあたりも始めから折り込んでデザインしましたからできました。

リアクォーターウインドまで延びたモール、キレイに揃った表示パネルの向き3

先代はスピード/タコメーターと、中央の大小2つの表示パネルが三者三様の“仰角”だった

リアクォーターウインドまで延びたモール、キレイに揃った表示パネルの向き4

新型ではセンターディスプレイとドライバー正面のメーターパネルの“面”の角度が揃った

島崎:ついでに(笑)。メーターを始め、インパネに点在していたパネル類の“向き”が従来はまちまちでしたが、新型ではキレイに揃いましたね。

五島:そこに気付いていただいてたいへんうれしいです。あれは内装をやっていた私の責任でした(笑)。新型では先進運転支援システムがどういう制御をしているか、ドライバーにしっかり伝えることが義務であり、より重要と考えました。そこで飛行機がオートパイロットの時にパイロットが見ている画面のように、面を揃えて、違和感をなくすようにしました。

島崎:こちらこそ、とてもうれしいです。どうもありがとうございました。

家族にも愛されるレヴォーグへ

家族にも愛されるレヴォーグへ

“キャラ変”とはそういうことだったのか……と五島さんのお話を伺って納得できた。レヴォーグはスバリストから絶大な人気を集める車種であり、もちろん今回の新型も、要素技術の進化分も可能なだけ盛り込まれ、期待に応えている。今まで以上に家族にも愛されるクルマとして初めてのフルチェンジを果たした新型が今後どう支持されていくか注目していきたい。

(写真:SUBARU)

※記事の内容は2020年9月時点の情報で制作しています。

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