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島崎七生人しまざきなおと

話題のニューモデル開発者に“深く細かく”直撃インタビュー もう少し大人になったかわいさ「ダイハツムーヴキャンバス デザイン」編

話題のニューモデル開発者に“深く細かく”直撃インタビュー もう少し大人になったかわいさ「ダイハツムーヴキャンバス デザイン」編
話題のニューモデル開発者に“深く細かく”直撃インタビュー もう少し大人になったかわいさ「ダイハツムーヴキャンバス デザイン」編

その細やかな観察眼では業界一、二を争うモータージャーナリストの島崎七生人さんが、話題のニューモデルの気になるポイントについて、深く、細かくインタビューする連載企画。第36回は2代目に進化した「ダイハツムーヴキャンバス」です。一見、旧型そっくりに見える外観スタイルを中心に、ダイハツ工業株式会社 くるま開発本部 製品企画部 第1企画グループ 主担当員の松山 幸弘(まつやま・ゆきひろ)さんと、デザイン部 第2デザインクリエイト室 CMFスタジオ 主任の畑 延広(はた・のぶひろ)さんに話を伺いました。

社内でも「変わってないよね」の声はあった

社内でも「変わってないよね」の声はあった

島崎:実は試乗会に先立ち日本橋のショールームで実車を前に取材に参加する機会があったのですが、そのとき「あら、新型はどこかな?」とマスクで隠れた顔のオデコに書いてあったかもしれません……。

松山さん/畑さん:はははは。

島崎:かなりのキープコンセプトぶりに驚きました。まず“そのココロは?”と伺いたいのですが。

松山さん:もともとキャンバスはムーヴの派生として、普通でいくと1世代で終わるような、その時代のムーヴとはちょっと別のお客様のために作ったクルマでした。ただキャンバスではこの6年間、一定のお客様がいて、気に入っていただいてきまして。

島崎:月販で5,600台超、これまでに38万台の販売台数で、もはや定番商品ですね。

松山さん:ええ。要はハイト系のスライドドアが今はひとつの市場として成り立っている。今やちょっと変わった派生車ではなく、一定のニーズがあり、ムーヴ系のひとつとして受け入れてくださるお客様がおられる。そんな検証の上で進めたのが今回のモデルチェンジでした。

島崎:イメージを変えなかった大きな理由はそこなんですね。

社内でも「変わってないよね」の声はあった-2

こちらは旧型ムーヴキャンバス

松山さん:はい。ただ仰るように社内でも「変わってないよね」の声はありました。なので途中で“変えて”みたりもしたのですが、そうすると今度は「ここまで変えるとキャンバスじゃないよね」と言われて。

島崎:さじ加減で苦労されたのですね。

松山さん:ですから結果的にでき上がったものを較べると、先代を0度だとすると10度くらいで似ている、差がわからない……そう思われるかもしれませんが、実は350度、逆回転でぐるーっと回って回って落ち着いたのが新型のデザインでした。気がつけば結果的に近いところにいた、そんな感じで。

島崎:10度ではなく、350度逆回転ですか!?

松山さん:もっと顔を変えたりとか、“変わったもの”は考えたりはしました。けれどそうすると今度はキャンバスのお客様の期待に応えられないということで、時代が変わっている分の変えなければいけない部分の織り込み方はだいぶ議論しました。

島崎:決して360度ではない、と。

松山さん:先代に対して可愛過ぎるだとか改善要望がありましたから。同じ年代の方でも昔は甘い可愛らしいが好まれましたが今はそうでもない。そういう風に変化しながらも、今のユーザーの方が求められるかわいさはある。いろいろ議論しましたが、それくらい意匠が大事なクルマだと考えています。

新しくなったところをどれだけアピールできるか

新しくなったところをどれだけアピールできるか

島崎:もはやキャンバスは、メインストリームの1車種なんですね。

松山さん:もともとファミリーユースのムーヴがあり、それに対してキャンバスを作った。そしてそこにも一定のお客様がおられるならシッカリ作ろうと。若いユーザーに買っていただく軽自動車の中でも少し特異なポジションにいるのかなぁ、と思います。

畑さん:先ほど松山が時代の流れと申しましたが、タントのようなスーパーハイト系のああいうスペースが市場で受け入れられてきたことと、ミニバン系のスライドドアの便利さも認知されてきました。そうした便利さとスタイルの良さが合致したニーズが主流になってきていると思います。

島崎:デザイナーの畑さんから、商品企画の方のようなお話が出ましたね。

松山さん:デザイナーの本心でいったら、もっとやりたいことはあると思います。

島崎:実はお二人にはそのあたりどんなバトルがあったのか伺おうかと思っていました。まさに、デザイナーの立場では「こんな風にはしたくないぞ!」とか(笑)。

畑さん:キャンバスのデザインに関しては1代目があれだけご好評をいただいたので、使いやすさ、便利さ、それとキュートさは継承したいと思っていました。あとはどこを進化させるか。いいところは残し、モデルチェンジに見えなければ意味がないので、新しくなったところをどれだけアピールできるか……に苦労しました。

松山さん:通常は“デザイナーはこの線を引きたい、でもこんなものは作れるか”といった喧嘩には絶対なるんですけど……。

島崎:いいですね、いいですね、そういうせめぎ合い(笑)。

松山さん:でもキャンバスはデザインで認知をいただいたクルマなので、設計部隊も工場も“このデザインで形にしなければいけない”と、どちらかというとデザイン部門の思うことに対して、設計や工場が苦しんだというか。小さなRひとつでも、だいぶせめぎ合いをしていました。

畑さん:たとえば特徴的なサンドイッチ2トーンも、今回は配色のバランスをどうやれば新しく見える、スッキリ見せられるかとか。遠くから見てもキャンバスだと認知していただけるようにそこはこだわりました。

イメージに近づく方法をみんなで考えてなんとか形に

イメージに近づく方法をみんなで考えてなんとか形に

島崎:外観の見えるところはすべて新規パーツだとのお話ですが、確認ですが、本当にそうなんですね?

畑さん:そのとおりです。

島崎:実車に試乗してわかったのですが、室内から見ると従来型よりもガラスが全体的に丸くカーブしていて、より包まれ感がある気がしました。

イメージに近づく方法をみんなで考えてなんとか形に-2

イメージに近づく方法をみんなで考えてなんとか形に-3

松山さん:今回は丸く艶やかに見せるためにそうなっています。ほかにもフェンダーパネルなど断面に薄くS字をかけていながらスッキリと見せるように、製造工程上で手いっぱいのところで仕上げたりしています。普通なら作りやすい程度でやるところだが、作れるところまでいいからやってくれ、と。

島崎:お話を聞いている限り、すでに限界を超えている感じですね。

松山さん:こういう形にしたいよね、とみんな納得し、理解してもらった結果だと思います。島崎さんがお聞きになりたいような喧々諤々はむしろなくて、このクルマの場合は「やるためにどうしたらいい?」とみんなで知恵を出し合ったというのが実際のところでした。

島崎:畑さん、そうなんですか?

畑さん:まったくそのとおりです。

イメージに近づく方法をみんなで考えてなんとか形に-4

島崎:そういえば新型はルーフにビードが入っていないんですね。

松山さん:ツルンとさせました。普通は剛性対策でビードを2本、3本と入れますが、今回は中にブレースをいれて雨音対策などをしました。意匠に対していろいろアイディアを出し合っています。

島崎:ルーフ自体も新型は全体で大きな弧を描くイメージですね。

畑さん:はい。新型はルーフだけではなくサイドのガラスもそうですが、従来型はちょっと立ち気味で不安定感があったのを、もう少し大きなRで全体的に描くようにし、ガラス面も少し倒し、安定感のあるシルエットになるように作りました。

松山さん:バックドアもウィンドゥにRをつけていくと、払拭の問題が出てワイパーがきれいに当たらない、こちらが強くなる……といったことがありますので、アームをここで曲げて払拭面を確保しましょうなど、とにかくイメージに近づく方法をみんなで考えてなんとか形にしたことばかりです。

子供っぽい表情から、ちょっと年上の大人に近づけた表情に

子供っぽい表情から、ちょっと年上の大人に近づけた表情に

畑さん:今回はライセンスプレートをバックドアではなくバンパーに下げて、ボディのスッキリさを表現しました。それとスマイルフェイスも、子供っぽい表情から大人っぽい表情にしまして、目(注・ヘッドライト)も少し高く、間隔も調整しました。2トーンの塗り分けもバンパーまで突っ切って弧を描くようにし、愛くるしさはキープしたままスッキリした表情にしました。

松山さん:おでこが大きい子供っぽい表情から、ちょっと年上の大人に近づけた表情に変えましょうということです。

子供っぽい表情から、ちょっと年上の大人に近づけた表情に-2

島崎家のモータージャーナリスト犬、シュン君

島崎:あの、実は我が家に生後半年の柴犬がいますが、来たときのパピー顔が、3ヵ月足らずですっかり大人顔に成長しましたが、そんな感じでしょうか?

松山さん:初代を出した6年前は赤ちゃん顔が受けたのだと思いますが、今はもう少し大人になったかわいさを気に入っていただけるのかなあと思います。

畑さん:それとボディサイドの2トーンですが、先代はドアハンドルの凹みがかかっていましたが、新型ではかからないようにラインをストンと通しています。骨格が新しいこともありますが、ディテールを目立たせない意図からです。ドアのオープニングラインもS字を描かないようなスッキリとした通し方をしました。

松山さん:本当をいうと、塗装の際のマスキングテープを貼り込む事情からいうとギリギリのラインでしたが、生産部門が頑張ってくれました。

畑さん:今回は新しい骨格で視界もよくなっていますが、ヒップポイントとベルトラインは共連れで少し上がっています。

次回「ダイハツムーヴキャンバス モノトーン&ターボ」編に続く

(写真:島崎七生人)

※記事の内容は2022年6月時点の情報で制作しています。

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