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島崎七生人しまざきなおと

開発者直撃インタビュー 心を整えられる空間、優しくなれる空間「マツダMX-30」編

心を整えられる空間、優しくなれる空間「マツダMX-30」編
心を整えられる空間、優しくなれる空間「マツダMX-30」編

その細やかな観察眼では業界一、二を争うモータージャーナリストの島崎七生人さんが、話題のニューモデルの気になるポイントについて、深く、細かくインタビューする連載企画。第10回は観音開きのドアとハイセンスなインテリアを持つ個性派SUV「マツダMX-30」開発主査の竹内都美子さんとチーフデザイナーの松田陽一さんに話を伺いました。

心を静めて笑顔になれるクルマ

心を静めて笑顔になれるクルマ

島崎:竹内さんには以前、今のマツダ2が3代目デミオとして登場した時の取材でお会いしました。

竹内:はい、試乗会でお話しましたね。

島崎:副主査を担当されていて、その前はテストドライバーをおよそ10年お務めになっていたのですね。

竹内:はい。総合商品性評価と言いまして、プレマシー、RX-8も見ていました。2015年から主査としてMX-30を担当しています。

島崎:その竹内さんが主査をお務めになったMX-30に、今、試乗してきました。

竹内:どうでしたか?

島崎:気持ちが整いました。フラットライドが心地よくて、今どきの交通事情の中でもリラックスして運転していられるなぁと思いました。

竹内:ありがとうございます、狙いどおりです! お話しますと、どんな形であってもとにかくお客様に笑顔になっていただけることが私たちの願いなんです。それと私は今も初代NAロードスターに乗っていますが、人格が感じられる相棒、家族の一員として迎え入れていただけるような商品、存在でありたいというのはずっと持っている思いです。

島崎:デミオの時にも伺ったお話ですね。

竹内:はい。そこに進化した技術を使って、より笑顔になっていただきたいんです。でも人間はいつでも元気いっぱいとは限りませんから、ストレスフルだったら心を静めたり、自分の気持ちを1度ニュートラルのところに戻して、そこから笑顔になっていただけたらなぁと思うんです。

島崎:優しくて、いいですね。

竹内:そこで私自身、笑顔について深く考えさせていただいて、今回は心を静めるとか自然体ということをテーマに掲げました。

島崎:そのテーマを前提にクルマのカテゴリーやジャンルも考えたのですか?

竹内:いえ、始めはカタチも何人乗りかも、どんなパワーソースを搭載するかも決まっていなかったです。まったくの白紙からスタートした開発でした。

島崎:SUVにしようと決まっていた訳でもなかった?

竹内:なかったです。世界中のお客様にお会いしてお話を伺う中で、心が整えられたり自然体でいられる空間作りをしたいなぁ、と。それとデザインやパワーソースを総合的に考えていった結果、このカタチとパッケージになりました。最初からこのサイズ、広さで……と枠に当てはめてはいなかったです。

EVにするためのスタイルではない

EVにするためのスタイルではない

島崎:松田さんもデザイン側からの提案はされたのですか?

松田:そうですね、マーケッター、プランナー、エンジニアなどみんないっしょに企画段階から進めたのはこのプログラムの特徴でした。

島崎:とすると、いろいろなクルマのアイデアはあったのですね?

松田:はい。モビリティと考えると、セグウェイもモーガンの3ホイーラーも世の中にはいろいろある。ありとあらゆる乗り物の視点で見て、時代が変わろうとしている時に“自分たちが気持ちいい乗り物はどんな乗り物か?”というところまで遡って考えましたね。世の中が動いているのは間違いない。その中でクルマの価値は何だろう?と考えた仕事でした。

島崎:EVにするためにこのスタイルになったという制約や影響はなかった?

松田:それはなかったですが、バッテリーを床下に積むので、あるハードポイントではEVがキツいのはありました。

島崎:その中でMX-30のあのカタチになった理由は何ですか?

竹内:走る、曲がる、止まるという移動手段であるクルマを超えた存在として、止まっているときの新しい価値を考えました。心を整える空間作り、創造性といったコンセプト、お客様の使われ方などを成立させるひとつの“解”がこのカタチでした。

ロジカルに考えるならCX-30、自由と+αを求めるならMX-30

島崎:CX-30との棲み分け、違いはどうお考えですか?

竹内:荷物が積めるとかロジカルに考える方はCX-30を選ばれると思います。一方で何かおもしろいことができるかも? 自分に使い方を委ねてくれるかも?と、クルマが発するメッセージを気持ちで受け止めてくださる方はMX-30を選んでくださるのでは。お休みにおじいちゃんとおばあちゃんが乗るから8人乗りが必要だわ……といった方は現実的に考えてCXのライン。MX-30は自由さとか、移動手段+αの魅力をこの空間に感じていただけるような、そういう方にお乗りいただきたいですね。

島崎:我が家は人2人と犬一匹なのですが、MX-30の空間は心地よさそうに思いました。

松田:ピッタリです(笑)。もう犬のために作りましたから。

竹内:本当にそうなんです。今回は用品も3つの世界観で用意しまして、動画も用意しましたが、その3つ目のシーンが愛犬家の方々のためのペットとの生活なんです。

島崎:実はこの夏、CX-30で軽井沢に行かせていただき、いい旅をしてきました。MX-30でも、もしもモデル犬が必要でご用命がありましたら、いつでもウチの犬を伺わせますので!

竹内/松田:ぜひ(笑)。

マツダの新ラインではなく実験的な「点」

島崎:ところでこのMX-30のデザインは、マツダの今後の“新ライン”がスタートするという意味ですか?

松田:いえ、メインのカーライン、旗艦車種に対して、実験的な取り組みをしてみようというひとつの“点”です。MXシリーズがこの系統で動く訳ではない。メインのカーラインはデザインでいうとクルマの本質とか魅力を突き詰めている。こちらはそうではなく、生活を変えてくれるとか、そういうことをデザインでトライしていこうとしたものです。

島崎:BMWの“i”のようなサブブランドにしようしている訳ではない?

松田:そういう意図はないです。ただそこでトライした要素、お客様からのフィードバックをメインのカーラインに戻していけたらいいなと、そんな取り組みです。

島崎:実車はかなりクリーンですね。

松田:はい、シンプルモダン系です。

島崎:女性でいうと、イヤリングもネックレスも私はつけないの……そんなナチュラル派の人のような?

松田:まさにそういう価値観の人が増えているので、そういう人に響くプロダクトにしようとは狙っています。

ボンネットとインパネが繋がっている感じ

ボンネットとインパネが繋がっている感じ

島崎:内装の質感とか仕上げもかなりこだわっていますね?

松田:基本的に作り込み、仕立ては他のマツダ車と変わらないレベル、こだわりで作っています。ただ今回のMX-30ではサスティナビリティ、モノや素材のバックにあるストーリーも価値としています。コルクだとか、リサイクルをしていることへの知的好奇心を満足させてくれるとか、そういう視点も意識しています。

島崎:ちょうどインパネの横長のエアアウトレットを挟んだ上下で、フェイシアの素材(硬さ)の違いがあるのが惜しいかな、と。

松田:ああ、そこは型の制約や、部品やデザインテーマのキリのいいところで作っていますが、もっとやりたいところではあります。ピラーを布巻きにしたりとか。でも無尽蔵にコストを掛ければお客様に高い値段で提供することになり、それも心苦しいので。

島崎:そうそう、試乗して感じたのですが、Aピラーの付け根の位置やボンネットが平らに見渡せるところが、すごく運転しやすくていいですね。

松田:そこは凄く意識しています。AピラーのポストはCX-30と同じくらいの位置にありますが、ピラーは立ち気味にして、インパネからボンネットが連続していて必ず見えるところもこだわっています。昔のクルマはそうなっていましたが、その感覚を作り込みました。それと車幅間隔とか停止線の位置が掴みやすいという知見も活かしました。サイドウインドゥも立たせて、頭まわりの空間をより広くしています。

島崎:ボンネットとインパネが繋がっている感じ、いいですね。そのお話、ササります。

松田:うっすらと自分のクルマのスタイルが掴めるような見え方を景色にしています。

新しさの中に懐かしさのある感覚、揺らぎの空間

新しさの中に懐かしさのある感覚、揺らぎの空間1

島崎:試乗していて初代ルーチェのロータリークーペを思い出しました。

松田:今のクルマはシャープにウェッジして後ろに駆け上がる感じで作りますが、昔のクルマは前にボリュームがあって後ろにヒューッと延びていた。そんな気持ちよさ、親しみやすさをエクステリアに活かそうとはしました。EVだとかハイテクなクルマをデザインしなければいけない……そんな先入観は排除しようというのがスタート地点でしたね。インテリアもハイテクで埋め尽くされると緊張感が高まってしまう。部屋の中でも昔ながらのものがあるとリラックスできる、自然体でいられて、気持ちいい。そんな、新しさの中に懐かしさのある感覚を盛り込んでいます。

新しさの中に懐かしさのある感覚、揺らぎの空間2

島崎:コルクの自然な風合いもいいですね。

松田:厳密にいうと、コルクもドアトリムも表情が同じものはないと思います。だからといって品質にバラつきがある訳じゃありません。揺らいでいるものの気持ちよさですね。インパネのアッパーの革シボも牛一頭から型をとっていますから、左右で同じではないんです。

島崎:揺らぎの空間作りですね。

新しさの中に懐かしさのある感覚、揺らぎの空間3

新しさの中に懐かしさのある感覚、揺らぎの空間4

松田:あとインテリアで言うと、リアシートはFFファミリアやユーノス・コスモ、ペルソナ風にしました。当時のFFファミリアのカタログにバスケットボールが置いてある写真があったのですが、これいいじゃない!と。リア空間は自分の趣味の延長であり、秘密基地であり、自由に使ってください……という雰囲気作りを心掛けました。

島崎:家の中に堂々と持って入れないようなヨ○バシカメラの大きな袋を隠して置いておくのにもいいですね。

松田:ドアを開ければ見えちゃいますが(笑)。

自然体でいられることの気持ちよさを

竹内:クルマといってもドライバーの方だけじゃなくて、助手席の方もお子様もペットも……と、皆さんが心を整えられる空間、優しくなれる空間が大事なんじゃないかなと。自然体でいられることの気持ちよさをMX-30で体験していただきたいと思っています。

島崎:竹内さんと松田さんのお話にすっかり癒されて、心が整いました。どうもありがとうございました。

(写真:島崎七生人)

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