寄稿記事(上級者向け)
モータージャーナリスト
島崎七生人しまざきなおと

開発者直撃インタビュー 人気SUVの作り分け方「トヨタRAV4 PHV&ハリアー」編

人気SUVの作り分け方「トヨタRAV4 PHV&ハリアー」編
ハリアー

その細やかな観察眼では業界一、二を争うモータージャーナリストの島崎七生人さんが、話題のニューモデルの気になるポイントについて、深く、細かくインタビューする連載企画。第6回はトヨタRAV4に追加されたPHVモデル、そして発売直後から大人気の新型ハリアーを手掛けたトヨタ自動車株式会社Mid-size Vehicle Company MSZデザイン領域統括部長の佐伯禎一さんに、同じクラスの2台の人気SUVをどう作り分けたのか、話を伺いました。

RAV4で優先したのは何よりも“Enjoy”

RAV4で優先したのは何よりも“Enjoy”1

島崎:RAV4 PHVはどういう位置づけのモデルですか?

佐伯:実はRAV4 PHVがやりたかったというより、RAV4自体のブランディングを考えたというのがまずあります。今は180を超える国や地域でRAV4は乗っていただいている。2019年の販売台数はグローバルで90万台程度でした。日本でも昨年4月に2ℓガソリンエンジン、ハイブリッドを発売しましたが、そこで従来の乗用車ライクなSUVとは一線を画す、SUVらしいワクドキや強いアイデンティティを狙いとしたポジショニングにしました。で、その思いがお客様にわかりやすく伝わるように3つの4駆を用意したり、外形も大径タイヤを履かせてどこにでも行けそうなものにしています。

もちろんRAV4 PHVにしても環境性能だけではなく、ハイブリッドも同じですが、楽しく運転できる、おもしろいよね、と思っていただけるようにした。RAV4のオリジナリティは何かといえば、環境エンジンを使いながらもっともっと楽しく走れるところ。そのイメージをしっかり形成するためにもPHVを投入しました。

RAV4で優先したのは何よりも“Enjoy”2

島崎:ただの環境対応車ではないと?

佐伯:ですからコンセプトに掲げた“3つのE”のうち、1番にもってきたのはEnvironmentでもElectronicでもなく“Enjoy”。環境ユニットを搭載していれば環境にいいです、燃費がいいです……から入るし、Electricも重要。でもPAV4はどんなパワーユニットを積んでも最初にくる言葉は「オンでもオフでも楽しく走れるよね」としたい。加えてPHVなら「航続距離がこれだけあれば、週末に遠出したり、どこへでも行けそうだよね」と行動範囲もより広がる。

島崎:RAV4の世界観をより深く、より広げる、と。

佐伯:はい。PHVにしても、単にパワーユニットの追加じゃない。私はSUVではほかにRAV4の上の、3列シートのハイランダーも見ているので、そこから、より車重の重いひとつ上のプラットフォームの知見も使った。パワーを上げても振り回されないよう足腰もしっかりさせながら、よりしっとりした安定感、安心感を求めました。

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ワンクラス上げた質感のいい乗り味のRAV4、それがPHV

ワンクラス上げた質感のいい乗り味のRAV4、それがPHV1

島崎:実車に試乗して走り出した瞬間、なんだこの安定感、上質感は!と思いました。確かにPHVの上級感はハイランダー譲りだなと感じました。それと80〜100km/hぐらいでの力強く余裕の加速感も印象的です。

佐伯:そこは大容量バッテリーを積んでいる分、PHVだからこそ実現できたことのひとつです。燃費に振るだけではなく、実際の日常的な使用シーンでもパワーとトルクに余裕があれば安心できるし、疲れない。PHVならではの加速感やアクセルペダルを抜いた時の減速感のジワッという反応は、慌ててブレーキを踏まずに済む。ステアリングを切る、アクセルペダルを踏む/緩めるといったドライバーの意図したインプットに対して忠実にクルマが反応する。するとそれが安心感に変わり、最終的に楽しいクルマだねと感じてもらえる。そうなればいいかなと思っています。

島崎:運転していて、その反応の頃合い、味付けは、まさに上級車のような落ち着いた振るまいですね。

佐伯:ありがとうございます。世の中には高級車はたくさんあり、性能も装備ももちろん充実している。私はRAV4でもそういう高級車のような体感をしてほしかった。加えて、1300kmの航続距離が遠出してみたいと思わせてくれる。そんなクルマになってほしいと考えているんです。

ワンクラス上げた質感のいい乗り味のRAV4、それがPHV2

島崎:バッテリーの“重さ”が乗り味にいい方向で効いているとも感じました。

佐伯:昨年RAV4を投入して、いいところもあれば、もっとこうしたかったという部分も残っていた。そこで“技術開発の匠”と呼ぶずっと開発を共にしてきた評価ドライバーと、例えばバネ上の動きをもっと穏やかにして、“ワンクラス上げた質感のいい乗り味のRAV4にしよう”とPHVではやってきましたので、お感じいただけてうれしいです。プラットフォームの補強分も重たくなってはいますが、剛性に効いています。

島崎:PHVは価格設定も絶妙ですね。

佐伯:基本的にRAV4と考えれば、手が届く価格帯がいいし、なかなかいい買い物をしたと思っていただけるようにした。欧州高級車をお持ちの方でも乗っていただければご納得いただけるようなクルマ、とも考えています。

ハリアーは車名から入るクルマ、乗用車として選ぶクルマ

ハリアーは車名から入るクルマ、乗用車として選ぶクルマ1

島崎:新型ハリアーはどういうクルマでしょうか?

佐伯:RAV4の乗り味を進化させた一方で、ハリアーにはハリアーなりの乗り味があると思っています。その部分の違い、棲み分けを意識して仕上げています。

島崎:既存のRAV4とプラットフォームは共通だそうですが、走りの味は変えてある?

佐伯:実はハリアーには、4WDのトルクベクタリングは設定しませんでした。というのは、欲張って何でもつけたくなるが、そうするとお客様にとって余分なものを付けてしまうケースが多々ある。また装備にしろ形にしろ同じだと、どちらにしようか迷ってしまうことになる。ご自分のライフスタイルに合わせてRAV4の世界観にしようか、ハリアーの世界観にしようか……と選ぶところから悩んで、楽しんでいただければいいと私は思っているんです。

島崎:今年から佐伯さんは、各車の味付けを見る目利きのお立場に就かれましたが、これからは選び甲斐のあるクルマを揃えるぞ、ということですね?

佐伯:あ、ハードル上げましたね(笑)。ともかく今、トヨタ車は全販売店で併売になりましたから、商品の差別化や、クルマごとのキャラクターを極力わけて、お客様のご趣味や価値観に合わせたクルマをおすすめできるようにしたいんです。

ハリアーは車名から入るクルマ、乗用車として選ぶクルマ2

島崎:突然ですが、初代ハリアーのベースになった、佐伯さんも担当されていた96年のウインダムを思い出します。

佐伯:あの時は河口湖の試乗会で灰皿のダンパーについて試乗車の中でお話しましたね、覚えていますよ。24、5年前ですから我々も歳はとりましたが(笑)、ウインダムは、同じセダンでもマークIIなどとは“異軸性”を持っていました。まさに考え方は同じで、RAV4はSUVらしい機能を重視しているのに対し、ハリアーというのは、車名から入るクルマ。乗用車としてお選びいただくクルマだと思っています。

島崎:弁護士何とかさんが選ぶハリアー?

佐伯:あはは、そういうCMをやってましたね。国際感覚をもたせて。そういう観点でいうと、ハリアーは、セダンから乗り換えていただいても違和感のないクルマ。何台もクルマを乗り換えてきたようなお客様が、たまにはこんなクルマを選んでみようかなあ……と構えずに楽しんでいただけるのかなぁと思います。

日本に育てられた先代ハリアーで、もう一度世界に挑戦したい

日本に育てられた先代ハリアーで、もう一度世界に挑戦したい1

島崎:先代は国内専用になりましたが新型も同じですか?

佐伯:いえ、実は今回はもう1度、世界に挑戦したいと考えています。2013年の先代ハリアーは、日本のお客様に育てられたブランドです。ハリアーのもつ内面に秘める美しさとか、おおらかな面がもつ造形の美しさは、日本発のプロダクトとして海外でもご支持いただけるのではないかと。そういうクルマがアメリカでも走っています……なんていいじゃないですか。成功するかしないかの自信はありませんけれど。

島崎:手応えありそうですね。

佐伯:セダン市場が縮小しているのはグローバルでも同じで、そこにこのハリアーがあればラギッド過ぎず大き過ぎず、でもセダンの快適性や質感の高さは持っている。新型は全高は叩いていますが、全長と全幅は広げています。セダンでいうとカムリと同等の取り回し性で、ヒップポイントが高い分、視界がよくなります。

日本に育てられた先代ハリアーで、もう一度世界に挑戦したい2

日本に育てられた先代ハリアーで、もう一度世界に挑戦したい3

島崎:アクティブなRAV4があって、ハリアーは日常的に乗りこなすのに適している、と?

佐伯:はい。それとね、今度のハリアーで採用した“調光パノラマルーフ”の音声認識操作に「星を見せて」「空が見たい」等のワードが入れてあるんです。ほら、我々世代が若い頃は、クルマに乗りながらそういうロマンチックなことを楽しんだじゃないですか。

島崎:佐伯さんは、今でもロマンチックでお若いということですね。どうもありがとうございました。

それぞれの個性が光るRAV4とハリアー

トヨタによれば、RAV4 PHVは現在受注をストップしており、今後の再開はホームページ等でお知らせする、としている。このことを佐伯さんに伺うと、PHVの新しいバッテリーの生産の問題で、もちろん目下、改善、対策に取り組んでいる、とのことだ。RAV4、ハリアーという個性が光る2車種が今度どう育てられていくか楽しみに見ていきたい。

(写真:島崎 七生人)

※記事の内容は2020年8月時点の情報で制作しています。

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