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島崎七生人しまざきなおと

開発者直撃インタビュー あの人気車とは別の個性で勝負!「ダイハツタフト」編

あの人気車とは別の個性で勝負!「ダイハツタフト」編
あの人気車とは別の個性で勝負!「ダイハツタフト」編

その細やかな観察眼では業界一、二を争うモータージャーナリストの島崎七生人さんが、話題のニューモデルの気になるポイントについて、深く、細かくインタビューする連載企画。第7回は軽自動車の人気SUV、スズキハスラーに真っ向勝負を挑む「ダイハツタフト」です。昨今の状況下、直接のインタビューではなく、慣れない書面でのやり取りを通じて見えてきたタフトの狙いとは?

第一印象は「ここまでハスラーに寄せる!?」

今どきの言葉遣い(?)で“正直ベース”で言わせていただくと、初めてダイハツタフトを(単独で)見たときの印象は「なんてハスラーっぽいのだろう!」だった。

実際のところ、全長と全幅は当然ながら軽の規格いっぱいの同数値だし、実はホイールベースも両車とも2,460mmと完全一致(タフトと同じ新プラットフォームのタントとも共通)。反対に実は全高についてはタフトがハスラーより50mmも低く、実車を並べてみればその差は歴然だ。

が、ハイト系ワゴンがどのクルマも物理的にスペースを追求し、共通のユーザーターゲット向けに作った結果、同じような背丈、雰囲気になるのはまだわかる。が、カテゴリーは同じとはいえ、どういう作り方でも法律はなく自由なはずのSUVで「ここまでハスラーに寄せる!?」と、再び今どきの言葉遣いで正直ベースにいうと感じたのが、僕の、このタフトの第一印象だった。

安定した足回りと包まれ感のある室内空間に見えたタフトらしさ

安定した足回りと包まれ感のある室内空間に見えたタフトらしさ1

……ここまでの文脈だとまるで営業妨害を意図しているように聞こえてしまうので、早めに誤解を解いておけば、試乗会で実車を見て、乗ったら、「ああ、まったく違うクルマだ」と感じた。とくに足回りの安定した感じやターボ車のパワーの質感は、軽快さが持ち味のハスラーとは対照的でさえある。

安定した足回りと包まれ感のある室内空間に見えたタフトらしさ2

また前後のドアで窓のサイズやデザインが“違えて”あるのも、“バックパック”がコンセプトだそうで、後席以降のスペースが多用途・多目的に使えるようにしてあるひとつの象徴としてのことだった。こうなると(自分からAピラーまでの距離は少し遠いが)高くフラットなボンネット越しに、腰下がやや深く包まれ感のある室内空間は落ち着くし、安心して乗っていられる。

……と、試乗後の好印象をお伝えしつつ、いつもならばエンジニアの方に直接お話を伺うところだったが、長引くパンデミックの状況下でそれが叶わず、今回はタフトの開発担当者(ダイハツ工業株式会社製品企画部チーフエンジニアの小村明紀さん)へ書面で質問をお渡しし、ご多忙な中、それに書面でお答えいただくという手段をとることとなった。以下、そのやりとりをまとめてみた。

バンパーコーナーの別部品化はコダワリ?

バンパーコーナーの別部品化はコダワリ?

Q:軽自動車の女性ユーザー比率が65%、いっぽう年齢は60歳以上が40%とのことですが、幅広いユーザーをターゲットにすることは、タフトでは意識されたのでしょうか?

A:「アクティブな志向をもつ幅広いユーザー」をターゲットに開発いたしました。日常使いが中心である軽自動車として、実際にアクティブに使われる方はもちろん、アクティブなイメージを求め自分らしさを表現したいお客様にとっても、使い勝手のよい、お求めやすい商品と考えています。

Q:運転席の着座高は、有料駐車場のゲートで(年配のドライバーでも)手を伸ばしてチケットが取りやすいように……といった配慮からですか?

A:運転手(人)を基点にパッケージしているので、小柄な女性から男性まで、日本のユーザーにとって使いやすいポジションとなるように考慮しています。

Q:外観で、バンパーコーナーの樹脂パーツが“別部品”になっている点にコダワリを感じました。塗り分けやデカール式ではなく、昔のクルマのようにもし擦ってもパーツ交換で済む。実車を見て、そんなユーザー目線を感じたのですが、それも意図されてのことでしたか?

A:SUVらしくタフさが感じられるデザインになるようにこだわりました。

エンジニアの几帳面さを感じる「完全フラットスタイル」

エンジニアの几帳面さを感じる「完全フラットスタイル」1

Q:インテリアでは、センターパネルの八角形(?)のデザインをはじめ、全体にゴツッ!としています。このニュアンスの意図するところはどこでしょうか?

A:ドライバー中心に配置した機能部品により、コクピットにいるような感覚とし、また大型トレイやコンソールトレイでタフさ、愛着の湧く道具感を演出しました。

エンジニアの几帳面さを感じる「完全フラットスタイル」2

Q:後席を倒してフラットにした状態で、ドアとサイドトリムと倒したシートとの“アワセ”がキチッとしているのは気持ちいいです。几帳面なエンジニアの方の性格が反映されてのことだったのでしょうか?

A:リアシートを倒した際、シートバックと荷室が段差なくつながり、ドアパネルとの隙間がなくなることで小物が落下しにくい、完全フラットスタイルを実現しました。

Q:リアシート座面(クッション)の前端がしっかり盛り上がっていて、なおかつクッションのストロークも十分あって、座り心地がとてもいいですね。ヘッドレストも大きめですが、これらは今後のダイハツの軽自動車の後席の“標準”になっていくのでしょうか?

A:今後の商品計画については、回答を控えさせていただきます。

効率化のおかげで実現したガラスルーフの標準化

効率化のおかげで実現したガラスルーフの標準化

Q:CMでも訴求しているガラスルーフが標準なのはコスト増につながると思いますが、標準化に踏み切った理由を教えてください。

A:“日常からレジャーまで大活躍、毎日を楽しくしてくれる相棒”をコンセプトに、SUVクロスオーバーのモデルとして「非日常」「行動半径の広がり」を日常から感じていただける室内パッケージとして商品企画をしております。また、設計・性能実験・工場での造り分けを1種類に効率化することで、お求めやすい価格帯の中で標準設定を実現いたしました。

Q:電動パーキングブレーキも採用されましたね。

A:常に性能向上に向けた開発を行っており、実用化を実現できたタイミングで車両搭載を始めました。

キャストアクティバでは吸引できなかったユーザーを

キャストアクティバでは吸引できなかったユーザーを

Q:かつて“M6ネジで自由な使い方ができるネイキッド”がありました。タフトのバックパックコンセプトの通じる方向性を感じましたが……。

A:直接的な関係はありません。ただ、タフトの開発段階で、販売現場から「キャストアクティバでは吸引できなかった、テリオスキッド、ネイキッドのお客様に提案できるクルマが欲しい」という声はありました。

Q:65プロファイルタイヤ採用の理由をお聞かせください。補修時の60タイヤとのコスト差にも配慮してのことでしたか?

A:軽自動車の小回り性(最小回転半径)の確保、15インチホイールのデザイン性、大径タイヤによるデザイン性、補修時のコスト等々、デザインと機能とコストの両立を考えて選定しました。

社長から細かい注文はなく自由に開発できた

Q:奥平社長は、車種開発ご担当時代にお話、お考えを伺った限りでは“こだわりの方”と理解しています。新型タフトに関しては、どんな注文、ご意見があったのでしょう?

A:ダイハツらしさである“良品廉価”“最小単位を極める”“先進技術をみんなのものに”の一貫思想のもとで、「タントに続くダイハツのラインアップの柱となる商品を、成長の軽クロスオーバー市場に」という話はありましたが、それ以上の細かな注文はなく、自由に開発しています。

ウィークポイント潰しではなく別の個性で勝負

……実は当初投げ掛けた“質問シート”のQ1は、スズキハスラーとの一番の違いはどこですか?、Q2はキャストアクティバと新型タフト(ここで筆者は“タント”とタイプミスしたままのシートを預けてしまった。この場をお借りして、関係各位にはお詫びしたい)の違いはどこですか?というものだった。

いずれも「質問の真意が分からないので回答を控えさせていただきます」の回答をいただいた。ニュアンスやその場の前後の文脈を臨機応変に関連させて話が進められない非対面でのインタビューの難しさを痛感した瞬間だった。

が、“真意”は、Q1では、試乗でも実感できたハスラーとの本質、キャラクターの違いの考え方を直接、言葉で伺いたかったこと、Q2については別のQでお答えいただいたが、乗用車ライクなキャストアクティバに対し、タフトはよりSUVらしさを打ち出すことでわかりやすく存在感をアピールしたのであろうことを確認したかった……のだった。

とはいえ、いずれにしろ以前のようにライバル車のウィークポイントを潰して登場した……というより、タフトの場合は、別の個性で登場し、軽のSUVクロスオーバー市場を共に盛り上げましょうね……的な姿勢は実感できた次第。まさにモノよりコト、時間の時代。タフトがどんな体験をさせてくれるか、これからが楽しみだ。

(写真:島崎 七生人)

※記事の内容は2020年9月時点の情報で制作しています。

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