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寄稿記事
村尾 美保

すべてのロードスター乗りと、未来の女性ドライバーに贈る小説〜KODORA〜第一話(下)

「ロードスターがやってきた! ハッピー&アンハッピー」(下)
「ロードスターがやってきた! ハッピー&アンハッピー」(下)

ロードスターがやってきた! ハッピー&アンハッピー(下)

サイドブレーキを引く音で意識が車内にもどる

「どぅお?」

青年が満足気な顔で問いかける
大きな桜の木の下、青年との間にもサクラが雪のように降り注ぐ

「こんな場所あるんですね、すごい」

カチャ、というシートベルトの外す音がして、彼はクルマから降りる
つられるように、クルマから降りる
彼は何も言わず土手の方に上がっていく
土手の上から、こっちにおいでと手招きする
木の枠だけの簡易で急な階段をあがる
最後の数段で彼が手を差し伸べられる
無意識に手を出し、それをつかむと、一気に足への重力が抜け土手の上に
そこは、一面の桜並木
桜の名所は色々見たけど、こんなところは初めて!

「どぅお?」

2度目の問いは大きな木にもたれかかりながら、勝ち誇ったような顔の彼がいる
一瞬声が出せずに周りを見渡す

「素敵です、あ、ありがとうございます。知らなかった、こんな場所があるなんて!」
「ここは秘密の場所」
「あれは、俺が生まれた場所、そして・・・」

指さす先の建物は病院だった
そして・・・の後に言葉はなかった、ちょっと寂しげな語尾
少しの無言の間、桜吹雪が二人の間を駆け抜ける

「さあ、行こうか」

もう少しという言葉が出る前に、彼は土手を降りていく

「あ!」
追いかけるように土手を降りる

「写真撮っていいですか・・納車記念に・・・」

ドアを少し開けた手がとまり

「どうぞ」

笑いながらクルマから離れようとする

「そのままでいいです、せっかくだから一緒に」

ちょっとキザっぽいポーズでおどけた彼とロードスターの記念写真

「代わろう」

差し伸べられた手にスマホを渡す

「イーして、もっと、もっと、もっと・・・」

子供に言い聞かせるように笑いながらスマホを構える
ほとんど苦笑のイー!になった笑顔で写真に納まる

kodora1-3

「ありがとうございます、記念になります」

スマホを受け取る
彼もスマホを出す
写真を撮られるのかと思いきや

「ちょっと電話させて」

違った
何かとても残念な気持ちになる

「あ!、俺・・そう、今から言う所に迎えに来てくれない」
「そうそう、住所は・・・・・・」

自宅までの間、クルマの事を色々話してくれた
彼もまたロードスター乗りである事
ラリーというレースをやっている事
そしてまだ大学院生である事
運転がもの凄く上手いことは、クルマの挙動でなんとなくわかる
腕自慢の父よりスムーズなのである
アパートまで5分もかからない
あっと言う間である
アパートに着いた時に残念な気持ちが走る

「止めるの、ここで良い?」
「あ、ハイ!」

なぜか、彼の顔を直視出来なくなっていた

「幌のしまうやり方教えてなかったね」

彼が幌をしまいながら説明しているが、まったく頭に入らない

「以上、簡単でしょ! わかったかな?」

「・・・・・・ハイ」

何故か小さな声しか出ない

「あの・・・」

言葉をかけようとしたとたん、彼のスマホが鳴って邪魔をする

「はい、俺・・・、そうそう、そこ右に曲がってすぐ」

スマホをしまいながら

「じゃあ、迎えが来たから」

キーを私に渡す

「あ、ありがとうございました」
「いえいえ、どういたしまして、俺も楽しかった!」

笑顔と共に背中が遠ざかる
何故か胸が苦しい

「あの・・・」

その言葉はクルマのエンジン音でかき消されていた
ステッカーだらけのクルマがアパート前に止まる
そこから出てきたのは、若い女性・・・、可愛い・・・、それも凄く
モデルのようである

「リョウ、急ぐから助手席に乗って」
「わりぃ~わりぃ~」

呼び捨てにする位、親密な関係・・・か

女性と思わず目があってしまう、にこやかな笑顔で会釈されてしまい
反射的に会釈してしまった
髪は金髪に近い、普通に日本語を話すが日本人ではないだろう。

「じゃあ~」

これまた、にこやかに手を挙げてクルマに乗り込む彼
呆然と立ち尽くすなか、ステッカーだらけの白いクルマは勢いよく発進して、あっという間に見えなくなる

3分間位たって、

「フ~、そんなもんだよね・・」

独り言で、気持ちを切り替える・・・、ことは出来なかった

=========

落ち着いたのは学校が始まってから
学校の食堂で、友人の静流(しずる)に事のいきさつを話す

「人生山あり谷ありだから面白いじゃん!」
静流(しずる)である。

「それより、クルマ手に入ったんでしょ・・どこか行こう!!、つれて行って~!!」

私の落ち込みなどまったく気にせず、たたみかけてくる

「あんたは、楽天的でいいよね」

この友人を見ていると、悩んでいるのが馬鹿らしく思えてくる
ふう・・・、ため息と共に落ち込んでいた気持ちは吐き出される

「じゃ、行こうか!!」
テンションを上げた後に、今の自分の運転スキルを思い出す

「もう少し練習したら・・・」

トーンが一気にさがる

「エエエ~~~、誰か運転出来る人探そうよ~」
「ロードスターは2人乗りなんだから、誰か連れて来たら貴方乗れないわよ」

静流が不満げな顔で無言の抗議をする

「そうそう、週末のテニス行く?」

そういえば、そんなサークルに入っていたな

「そうね、休みで体もなまっているし・・行くか!!」

気分が落ち込んだ時は、体を動かすのが一番である
こんな事も忘れる位、落ち込んでいたわけだが

(つづく)

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イラスト:らびえぬ

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