2021年8月の乗用車全体(軽自動車を含む)の販売台数は26万3602台、前年比は97.5%と2ヵ月連続で前年割れとなりました。特に軽自動車は82.7%と落ち込みが大きくなっています。
軽自動車を除く7月の新車販売ランキングはトヨタヤリスが14ヵ月連続首位、トヨタルーミーが8ヵ月連続2位となるなか、販売が本格化した新型トヨタアクアが3位に、オーラ追加効果で日産ノートが4位にランクアップしています。
一方、軽自動車(乗用車)はホンダN-BOXが21ヵ月連続で首位をキープ、2位も11ヵ月連続でスズキスペーシアです。スズキワゴンRは新車種スマイルが追加され6位に食い込みました。今回も自動車評論家の島崎七生人さんに詳しく解説をしてもらいましょう。
半導体不足と東南アジアのコロナ禍拡大で先行きは不透明
まず、去る9月9日にオンラインで行われた日本自動車工業会の記者会見で示された、同会の見解をお伝えしておこう。
足元では需給逼迫が続いている半導体の影響に加え、東南アジアのコロナ感染再拡大もあり、部品供給不足が発生。自動車生産と販売への影響はグローバルに広がっている。国内販売も7、8月は対前年同月比2ヵ月連続でマイナスとなり、すでにコロナ禍の影響で販売が落ち込んでいた昨年と較べてもマイナスだから、いかに厳しい水準かがわかる。
9月も厳しい状況は続いており、10月には会社によってはもう一段の減産の可能性もある。この秋以降のコロナ感染再拡大の影響は見通せず、半導体の影響も今後の需給動向にもよるが不透明だ。お待たせしてご迷惑をおかけしているお客様が大変多くいらっしゃるので、1台でも多く、1日でも早くお届けできるよう、会員各社にて鋭意取り組んでいきたい。(半導体不足は)構造的な問題もあるから、中・長期的な状況改善に向け、自動車業界全体としても、政府と連携しながら、協調できる領域においてはできるだけの対応を模索していきたい(日本自動車工業会・永塚誠一副会長)。
トヨタは需要の多い車種への傾斜生産などで辛うじて前年比アップ
一例では、トヨタが9月17日時点で、10月は全14工場28ライン中、14工場27ライン、ほぼ全車種に及ぶ規模で11〜1日の稼働停止を実施。生産計画の見直しは8月の計画に対して9月の追加分が約7万台(海外4万台、国内3万台)、10月分が約33万台(海外18万台、国内15万台)。これにより2022年3月期 通期生産台数見通しは、これまでの930万台から900万台レベルを見込んでいるという。他メーカーも同様で、国内の生産拠点での操業停止の延長を実施するなどしており、厳しい状況は続いている。ただし販売は7月にトヨタが北米で前年比130.5%の26万台、中国で同・102.8%の17万台、日本国内も同・109.4%と、いずれも前年超の実績を上げている。需要の高い車種への柔軟な生産計画の変更の実施(トヨタ)などの対応策をとりながら乗り切ろうとしているのが現状だ。
国産乗用車販売台数 2021年8月(軽自動車を除く)
順位 | 車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | ヤリス | トヨタ | 18,476 | 155.8 |
2 | ルーミー | トヨタ | 10,347 | 184.2 |
3 | アクア | トヨタ | 9,442 | 247.6 |
4 | ノート | 日産 | 7,157 | 155.7 |
5 | カローラ | トヨタ | 7,108 | 81.2 |
6 | アルファード | トヨタ | 6,483 | 91.3 |
7 | ライズ | トヨタ | 5,920 | 63 |
8 | フリード | ホンダ | 5,200 | 124.8 |
9 | ハリアー | トヨタ | 4,987 | 80 |
10 | ヴェゼル | ホンダ | 4,404 | 267.7 |
11 | セレナ | 日産 | 4,303 | 85.1 |
12 | ヴォクシー | トヨタ | 4,243 | 91.5 |
13 | フィット | ホンダ | 4,122 | 57.6 |
14 | RAV4 | トヨタ | 3,825 | 115.7 |
15 | プリウス | トヨタ | 3,793 | 92.5 |
16 | シエンタ | トヨタ | 3,351 | 81 |
17 | ノア | トヨタ | 3,080 | 92.7 |
18 | ステップワゴン | ホンダ | 2,907 | 106.8 |
19 | ソリオ | スズキ | 2,840 | 102.5 |
20 | MAZDA2 | マツダ | 2,567 | 129.8 |
21 | ランドクルーザーW | トヨタ | 2,562 | 212.4 |
22 | パッソ | トヨタ | 2,362 | 99.2 |
23 | キックス | 日産 | 2,152 | 182.7 |
23 | インプレッサ | SUBARU | 2,152 | 105 |
25 | レヴォーグ | SUBARU | 1,825 | 491.9 |
26 | オデッセイ | ホンダ | 1,635 | 286.3 |
27 | ロッキー | ダイハツ | 1,507 | 64.3 |
28 | デリカD5 | 三菱 | 1,437 | 229.9 |
29 | C-HR | トヨタ | 1,304 | 55.5 |
30 | リーフ | 日産 | 1,282 | 219.5 |
31 | クラウン | トヨタ | 1,244 | 131.1 |
32 | CX-5 | マツダ | 1,228 | 75.6 |
33 | フォレスター | スバル | 1,166 | 72.6 |
34 | スイフト | スズキ | 1,020 | 43.8 |
35 | トール | ダイハツ | 996 | 96.4 |
36 | MAZDA3 | マツダ | 890 | 53.7 |
37 | カムリ | トヨタ | 863 | 131.4 |
38 | シャトル | ホンダ | 844 | 61.9 |
39 | エクストレイル | 日産 | 820 | 77.7 |
40 | CX-8 | マツダ | 771 | 59.2 |
41 | CX-30 | マツダ | 760 | 39.9 |
42 | エスクァイア | トヨタ | 730 | 41.7 |
43 | クロスビー | スズキ | 702 | 55.1 |
44 | CX-3 | マツダ | 689 | 71.2 |
45 | UX250H | レクサス | 683 | 122.6 |
46 | マーチ | 日産 | 678 | 205.5 |
47 | シビック | ホンダ | 671 | 627.1 |
48 | ハイエースワゴン | トヨタ | 629 | 97.7 |
49 | ロードスター | マツダ | 592 | 132.1 |
50 | ジムニーワゴン | スズキ | 553 | 40 |
※ 上記の台数は車名別の合算値となり、一部教習車などを含みます。
※ 例:ブランド通称名 カローラはカローラシリーズ全車種と教習車を含んでいます。
トヨタヤリス、ルーミーに続いてアクアが3位にランクイン
8月の新車販売台数は26万3602台で、対前年比97.5%となり、7月に続いての前年割れとなった。自工会副会長の言及にもあるように、すでにコロナ禍の影響に喘いでいた去年をさらに下回る結果となり、厳しい状況が続いていると言わざるを得ない。登録車は辛うじて前年を上回ったが、50位圏内に入った車種であっても、一部の例外を除き軒並み台数を落としているのは一目瞭然。ランキング50位圏内だけでも、月販1000台を切る車種が7月は42位以下の9車種だったのに対し、8月は35位以下、16車種に増えた。
ランキングでは、1位のトヨタヤリス、2位のルーミーは不動。ヤリスは14ヵ月連続1位、ルーミーも今年1月から8ヵ月連続で2位だ。そしてアクアは9442台で、7月の5位から3位へとジワリと順位を上げ、今後、ヤリスにどう迫るのかが気になるところ。一方でカローラも、登場してきたSUVのカローラクロスがどのくらいの“ブースター”になるかも注目だ。ホンダシビックは新型の発売が9月3日だったが、8月中に671台がカウントされ、47位に入っている。マツダ車はロードスターが49位に食い込んだほか、ガソリンエンジンの改良と特別仕様車の設定への反響かマツダ2が順位を上げ、台数を伸ばす一方、海外市場で高評価のCX-30は41位に留まるなど、車種ごとに動きはさまざまだ。
日産ノートが4位に躍進、ホンダフリードの好調も目立つ
そのほか日産ノートが7月の9位から今月は4位に順位を上げた。ホンダ車はここに来てフリード、ステップワゴン、オデッセイが順位または台数を上げた(伸ばした)傍らで、ヴェゼル、フィットの動きは鈍い。“半導体問題”の影響もあるようだ。
軽乗用車販売台数 2021年8月
順位 | 車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | N-BOX | ホンダ | 13,229 | 91.1 |
2 | スペーシア | スズキ | 9,300 | 87.9 |
3 | タント | ダイハツ | 8,214 | 89.8 |
4 | ハスラー | スズキ | 7,246 | 113.5 |
5 | ムーヴ | ダイハツ | 6,897 | 90.8 |
6 | ワゴンR | スズキ | 5,235 | 92.4 |
7 | タフト | ダイハツ | 4,887 | 92.3 |
8 | ルークス | 日産 | 4,739 | 76.3 |
9 | ミラ | ダイハツ | 4,514 | 97.1 |
10 | アルト | スズキ | 3,417 | 68.1 |
11 | N-WGN | ホンダ | 3,391 | 57.9 |
12 | デイズ | 日産 | 2,594 | 58.4 |
13 | eK | 三菱 | 2,262 | 105.9 |
14 | ジムニー | スズキ | 1,812 | 55.6 |
15 | ピクシス | トヨタ | 1,758 | 94.3 |
※ 通称名についてはメーカーごとに同一車名のものを合算して集計しています(アルト、ミラ、ムーヴ、eK、ピクシスなど)
スズキハスラーが初の4位、スマイルを追加したワゴンRも6位にジャンプアップ
8月の軽自動車の販売台数は前年同月比82.7%と大きな落ち込みを見せた。そんな中、1位のホンダN-BOXと2位のスズキスペーシアの順位は変わらず。とはいえ御多分にもれず、おのおの台数は7月に対して落としている。いっぽう3位につけたダイハツタントは、7月に対し台数は上乗せ。自己最高位4位のハスラーは前年比113.5%で、台数も7月の5635台から7246台に伸ばした。
同じスズキのワゴンRは“スマイル”を登場させたところだが、7月の12位から8月は6位と大きく順位を上げ、台数も伸ばし、今後の動きが注目される。ちなみにライバル車のムーヴは順位と台数を落としている。
全体として軽自動車はランキング15位内の顔ぶれは大きくは変わらないものの、7月と較べると、ジムニーが14位に再浮上したのに対し、N-ONEが圏外に外れ、圏内のホンダ車は1位のN-BOXと11位のN-WGNの2車になった。ホンダの8月の新車販売台数は普通車、小型車と合わせた数字で見ると3万8454台だったが、これはトヨタ(9万3528台)に次ぐ台数であり、6月以降、3ヵ月連続で2位を確保している。
※記事の内容は2021年9月時点の情報で制作しています。