2021年10月の乗用車全体(軽自動車を含む)の販売台数は23万499台、前年比は67.8%と、前月同様大きく前年を割り込みました。トヨタが55.4%、ダイハツも45.4%と大きく落ち込む一方で、三菱は117.2%、日産も101.2%と前年を上回るなど、引き続きメーカーによって減産の影響には濃淡があるようです。
軽自動車を除く10月の新車販売ランキングも動きが大きく、トヨタはヤリス、アクア、カローラ、ルーミーがTOP4を占めたものの、ホンダがヴェゼル5位、フリード6位、フィット8位とTOP10に3台を送り込みました。
一方、軽自動車(乗用車)は22ヵ月連続首位だったホンダN-BOXが3位に後退、代わってスズキワゴンRが首位に輝きました。2位も2ヵ月連続で日産ルークスとなっています。今回も自動車評論家の島崎七生人さんに詳しく解説をしてもらいましょう。
軽乗用車販売台数 2021年10月
順位 | 車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | ワゴンR | スズキ | 8,808 | 179.7 |
2 | ルークス | 日産 | 8,696 | 123.0 |
3 | N-BOX | ホンダ | 7,442 | 46.4 |
4 | スペーシア | スズキ | 6,319 | 51.6 |
5 | ハスラー | スズキ | 5,416 | 82.9 |
6 | デイズ | 日産 | 5,035 | 110.8 |
7 | タフト | ダイハツ | 4,926 | 65.9 |
8 | タント | ダイハツ | 4,771 | 36.4 |
9 | ミラ | ダイハツ | 4,520 | 73.4 |
10 | N-WGN | ホンダ | 4,396 | 74.0 |
11 | アルト | スズキ | 3,890 | 73.1 |
12 | ムーヴ | ダイハツ | 3,336 | 31.9 |
13 | eK | 三菱 | 2,511 | 100.5 |
14 | ジムニー | スズキ | 1,994 | 45.2 |
15 | エブリイワゴン | スズキ | 1,298 | 84.3 |
※ 通称名についてはメーカーごとに同一車名のものを合算して集計しています(アルト、ミラ、ムーヴ、eK、ピクシスなど)
N-BOX、ついに首位陥落の衝撃
2021年10月の販売台数は、まず軽自動車から取り上げることにしたい。というのも、まさしく市況に“大異変”が起こったからだ。9月まで連続22ヵ月連続で不動の販売台数第1位を記録し続けたホンダN-BOXが、何と23ヵ月連続とならず3位に後退、代わってスズキワゴンRが1位の座に浮上、2位には9月と同順位の日産ルークスがつけ、この2車でN-BOXを押さえつける結果となった。
ワゴンR躍進の理由はスマイル効果
1位の座に躍り出たワゴンRは、もちろん9月に発売開始となったスマイルの効果があってのことで、前年比も179.7%と15位圏内の銘柄ではダントツの伸びを示している。2位のルークスも前年比123.0%で、9月の90.4%からさらに伸長をみせた。
ただし販売台数をみると、1位のワゴンRで8,808台と、N-BOXの9月の台数(1万1,805台)には及ばず、2位のルークスも自身の9月の販売台数(9,708台)よりもおよそ1,000台少ない8,696台だ。3位のN-BOXの販売台数の落ち込みが大きいこともあり、10月の順位はこのようになったものの、ワゴンRとルークスの販売台数の差はおよそ100台程度と小さい。
11月の状況も流動的、N-BOXの返り咲きなるか
スズキの場合、東南アジアでの新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品供給不足による国内完成車工場の操業停止は10月に行われたものの、11月に予定されている操業停止は、軽自動車以外の車種のラインのみの発表となっている。なのでワゴンRの供給の復調次第で、11月には10月よりも販売台数が伸ばせる可能性がある。
2位のルークス、3位に留まったN-BOXも状況は同様なはずで、だとしたら11月もワゴンRが1位を堅持するか、あるいはN-BOXが再び1位に返り咲くかは、今後のそれぞれの生産、供給体制次第といったところか。
また唯一の1万台超の販売台数だったN-BOXが4桁台数に落ちたことが象徴しているように、全体の販売台数は決して好調とはいえない数字が並ぶ。車種によっては日産デイズ、三菱eKなど前年比では辛うじて100%を上回っているものの、台数で9月と較べた場合、6位のデイズは台数が上乗せされたがeKは順位、台数ともに落としている。そのほかも上位15車中10車が9月よりも販売台数を下げているのが現状で、10月はなかなか辛い状況にあったことが数字からもわかる。
国産乗用車販売台数 2021年10月(軽自動車を除く)
順位 | 車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | ヤリス | トヨタ | 10,596 | 57 |
2 | アクア | トヨタ | 7,643 | 188.1 |
3 | カローラ | トヨタ | 7,278 | 70.8 |
4 | ルーミー | トヨタ | 6,999 | 60.9 |
5 | ヴェゼル | ホンダ | 6,831 | 228.8 |
6 | フリード | ホンダ | 6,237 | 79.5 |
7 | ノート | 日産 | 5,502 | 138.8 |
8 | フィット | ホンダ | 5,403 | 60 |
9 | アルファード | トヨタ | 4,588 | 45.5 |
10 | シエンタ | トヨタ | 4,423 | 72.8 |
11 | ライズ | トヨタ | 4,064 | 30.7 |
12 | セレナ | 日産 | 3,978 | 92.3 |
13 | ハリアー | トヨタ | 3,490 | 36.1 |
14 | プリウス | トヨタ | 3,274 | 56.3 |
15 | ステップワゴン | ホンダ | 3,126 | 99.8 |
16 | ソリオ | スズキ | 3,058 | 119.9 |
17 | ヴォクシー | トヨタ | 2,634 | 42.1 |
18 | スイフト | スズキ | 2,613 | 117.4 |
19 | RAV4 | トヨタ | 2,598 | 51.9 |
20 | CX-5 | マツダ | 2,163 | 117.9 |
21 | インプレッサ | SUBARU | 2,126 | 67.4 |
22 | ランドクルーザーW | トヨタ | 1,995 | 76.1 |
23 | ノア | トヨタ | 1,970 | 42 |
24 | パッソ | トヨタ | 1,892 | 56.3 |
25 | オデッセイ | ホンダ | 1,860 | 2695.7 |
26 | キックス | 日産 | 1,834 | 51.8 |
27 | デリカD5 | 三菱 | 1,480 | 164.8 |
28 | BRZ | SUBARU | 1,266 | 6028.6 |
29 | MAZDA2 | マツダ | 1,239 | 57.4 |
30 | シビック | ホンダ | 1,218 | 128.3 |
31 | CX-8 | マツダ | 1,217 | 110.9 |
32 | レヴォーグ | SUBARU | 1,181 | 5368.2 |
33 | クラウン | トヨタ | 1,146 | 53.8 |
34 | ジムニーワゴン | スズキ | 1,038 | 66.8 |
35 | C-HR | トヨタ | 1,022 | 38 |
36 | フォレスター | SUBARU | 1,019 | 55.6 |
37 | シャトル | ホンダ | 927 | 72.2 |
38 | リーフ | 日産 | 922 | 138.4 |
39 | トール | ダイハツ | 875 | 39.7 |
40 | エクストレイル | 日産 | 746 | 45.5 |
41 | CX-30 | マツダ | 715 | 39.5 |
42 | MAZDA3 | マツダ | 668 | 48.4 |
43 | ハイエースワゴン | トヨタ | 580 | 74 |
44 | マーチ | 日産 | 572 | 121.2 |
45 | CX-3 | マツダ | 566 | 72.9 |
46 | ロードスター | マツダ | 541 | 146.6 |
47 | UX250H | レクサス | 527 | 72 |
48 | クロスビー | スズキ | 522 | 51 |
49 | カムリ | トヨタ | 483 | 44.5 |
50 | エスクァイア | トヨタ | 428 | 26 |
※ 上記の台数は車名別の合算値となり、一部教習車などを含みます。
※ 例:ブランド通称名 カローラはカローラシリーズ全車種と教習車を含んでいます。
トヨタの表彰台独占は続くが……
一方で登録車だが、こちらも前年比68.0%、15万608台と、9月に引き続いて厳しい結果を残した。なかでも、すでに報道があったトヨタ(前年比55.2%)に象徴されるとおり落ち込みは依然大きなままで、情勢がまだ平時ではないことを痛感させられる。他ブランドも前年比は、レクサス74.1%、マツダ75.2%、日産89.2%、スバル97.2%、ホンダ99.2%といった状況。反対にプラスは、三菱143.7%のみだ。
10月の販売台数を順位で見てみると、1位ヤリス(10,596台)、2位アクア(7,643台)、3位カローラ(7,278台)のトヨタ3強(?)は、各々台数は落としているものの9月と変わらないポジション。
1位のヤリスは、前述のとおり軽自動車のワゴンRが1位ながら台数が1万台割れだったのに対して、唯一この数字で健闘している。それと4位は9月がアルファードだったのに対して、10月は同じトヨタのルーミーが9月の13位から浮上し、台数も3,638台(9月)から6,999台に伸ばした。10位以内にはほかにアルファード(9位/4,588台)、シエンタ(10位/4,423台)の2台のトヨタ車が入っている。
ホンダが躍進、ベスト10に3車種ランクイン
またこうしたなかで、10月はホンダ車の躍進も見逃せない。まずヴェゼルだが、9月は3,901台で9位に甘んじていたが、10月はトヨタ車を追撃するかのように5位にランクイン、台数も6,831台に伸ばした。続く6位にはこのところ堅調なフリードが入っており、台数も9月に対し微増ながら6,237台確保した。もう1台、フィットも8位に入っており、台数も10位だった9月の3,730台から、10月は5,403台へ1,700台弱上乗せしている。
10位圏内は、トヨタ車6車種、ホンダ車3車種と、この両社が強みを発揮する中、唯一日産がノートで7位に食い込んだ。ただし台数は9月の6,830台に対し5,502台と落とした形だ。ノートは標準車に加えノート・オーラ、ノートNISMO、さらにオーテックが手がけたノート・クロスオーバーと、意欲的なバリエーション展開を見せており、今後生産、供給体制が整えば、台数が伸ばせる可能性は十分にある。
ハイブリッド追加のトヨタライズとダイハツロッキーに注目
50位圏内を見渡すと、ほかに生産終了が発表されたホンダオデッセイが台数を増やしたほか、マイナーチェンジ効果かマツダCX-5も9月に対し台数を上乗せした。トヨタライズは11位につけ台数は4,064台と9月(3,091台)より増やしているが、ハイブリッドの登場で今後上位にどう食い込んでいくか、ダイハツロッキーとともに動向に注目したい。またスバルの新型車BRZが28位に入り、台数も1,268台と順当な出足を見せている。
※記事の内容は2021年11月時点の情報で制作しています。