岡崎五朗
寄稿記事(上級者向け)
モータージャーナリスト
岡崎五朗おかざきごろう

「ホンダレジェンド(自動運転レベル3)」世界初のレベル3は間違いなく偉大な一歩(岡崎五朗レポート)

「ホンダレジェンド(自動運転レベル3)」世界初のレベル3は間違いなく偉大な一歩(岡崎五朗レポート)
カルモくんなら新車が

先進的な運転支援機能である自動運転レベル2はすでにテスラのPSD、日産のプロパイロット2.0、スバルのアイサイトXなどが採用しています。しかしホンダから登場したホンダセンシングエリートはさらに上の自動運転レベル3を市販車として世界で初めて実現。果たして何が違うのか、+350万円の価値はあるのか。岡崎五朗さんのレポートをお届けしましょう。

数多くのテクノロジーと二重三重の安全対策、そのお値段375万円なり

数多くのテクノロジーと二重三重の安全対策、そのお値段375万円なり

ホンダから世界初の自動運転レベル3搭載モデル、レジェンド・ハイブリッドEXホンダセンシングエリート4WDが発売された。通常モデルの価格が724.9万円であるのに対し、ホンダセンシングエリート搭載モデルは1100万円と、価格差は375万円に達する。搭載された数多くのテクロノジーや、万が一の際の安全を担保する二重三重の安全対策を考えれば納得しないわけにはいかない価格ではあるが、商品価値と技術は常に噛み合うわけじゃない。ユーザーが価格に見合った価値を感じなければ買ってもらえないからだ。

テスラのレベル2とレジェンドのレベル3の決定的な違い

テスラのレベル2とレジェンドのレベル3の決定的な違い1

ではホンダセンシングエリートは何ができるのか。自動運転レベル3と言ってもピンとこない人も多いだろうから、誤解を恐れず簡単に表現しよう。自動運転レベル3では万が一事故が起きてもドライバーの責任ではなくクルマの責任になる。この責任の所在の違いこそが、普及が進んでいるレベル2とレベル3の決定的な違いであり、またメーカー技術陣にとっては最高に高いハードルになる。

テスラのレベル2とレジェンドのレベル3の決定的な違い2

自動運転というとよく引き合いに出されるテスラも実際はレベル2であり、事故が起きたときの責任はドライバーにある。日産のプロパイロット2.0やスバルのアイサイトXも同じだ。で、アクシデントが起こったときの責任がドライバーにある以上、自動運転という言葉はふさわしくないとして、レベル2は「運転支援機能」と分類される。テスラ(のFSD)もプロパイロット2.0もアイサイトXもハンズオフ(手放し運転)機能を備えているが、ドライバーは何かあったときのために常に周囲に気を配り、ブレーキを踏むなりステアリングを切るなりして安全を確保しなければならない。

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手を離しても目を離しても、そして事故が起きても

手を離しても目を離しても、そして事故が起きても1

手を離しても目を離しても、そして事故が起きても2

ところがレジェンドはレベル3だから「常に周囲に気を配る」ことをドライバーに求めない。ドライバーはステアリングから手を離し、目も離して車載モニターに映し出されたテレビを観てもいいし、ナビを操作してもいい。その間に事故が起きてもドライバーの責任にはならない。これはもう従来の運転の常識を覆すめちゃめちゃスゴいことである。

システムの上手な運転を理解するまでは正直なところ怖かった

システムの上手な運転を理解するまでは正直なところ怖かった

首都高速湾岸線の渋滞区間でレベル3を体験したが、正直なところ最初のうちは怖くてテレビを観る気にはならなかった。助手席に座っているホンダのエンジニアから「いまはレベル3状態なので前方をみていなくても大丈夫ですよ」と促されたものの、長年の経験で染みついた習慣がすぐに変えられるわけじゃない。一瞬モニターを見ても、気になって周囲を監視してしまう。しかし、そうこうしているうちにシステムがきわめて上手に運転してくれることがわかってきた。車線のトレース性はもちろんのこと、先行車との車間調整、左右から割り込んでくるクルマへの対処なども想像以上にスムーズにこなす。ということで数分後には安心してテレビ画面を見ることができるようになっていた。性能的に可能なだけでは不足で、ドライバーが安心して運転を任せる気になることが重要だということを改めて感じた。

常にレベル3で走れるわけではない

常にレベル3で走れるわけではない

ただし、常にレベル3状態で走れるかというとさすがにそれは現段階では無理で、①自動車専用道路上を、②50km/h以下で走行中、という厳しい制約が課せられる。加えて逆行、強い雨、雪、工事区間、カーブの多い場所などでもレベル3にはならない。また、システムに何らかの異常が発生した場合など、車両が自分の手には負えないと判断した場合は、ウォーニングランプとアラーム音とテキストメッセージでレベル3の終了を告げる。その場合ドライバーはすぐに運転を引き継がなければならない。目は離してもいいが、居眠りをしたり、当然だが飲酒をしたりしてはいけないのは、この引き継ぎ作業を速やかかつ確実に引き受けるためだ。ちなみに、レベル3時のスマホ操作は法的にはOKだが、運転引き継ぎ要請に気付かないリスクが出てくることを考慮しホンダは推奨していない。もちろん、居眠りや飲酒もNGだ。

夢のように快適、30〜50万円程度になればキラーコンテンツに

そこで考えなければならないのは、渋滞時の高速道路という限定された条件下でのレベル3自動運転に375万円の価値があるかどうかだ。毎日渋滞の高速道路を使って通勤する人にとっては間違いなく夢のように快適だ。GWやお盆のなかクルマで帰省する人にとっても最高だろう。しかしその対価が375万円だとすると躊躇しちゃうな、というのが多くの人のホンネだと思う。実際、ホンダもそこは理解していて販売は100台限定、しかもリース販売のみとしている。だがレベル3を世界で初めて世に問うたのは間違いなく偉大な一歩であり、この技術は今後コストダウンとともに他の車種へと展開され民主化されていくに違いない。いずれヴェゼルクラスまで降りてきて、30〜50万円程度のプラスで手に入るようになれば、クルマ選びのキラーコンテンツになる可能性もある。

レベル3の普及に向けた次の10年

レベル3の普及に向けた次の10年

レベル3は中途半端であり、やるなら一気にレベル4までもっていくべきだという意見もあるが、僕は睡眠や飲酒も可能なレベル4が普及するのには少なくとも20年程度かかるとみている。そういう意味で、次の10年はレベル3の普及に向けた10年になるだろう。ひょっとしたら10年後、「レジェンドのレベル3は375万円もしてたんだよな。時代も変わったもんだね」なんて会話をしているかもしれない。

※記事の内容は2021年5月時点の情報で制作しています。

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