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「トヨタMIRAIプロトタイプ」 FCV(水素燃料電池車)である以前に、走りの素晴らしさに強く惹かれた(岡崎五朗レポート)

「トヨタMIRAIプロトタイプ」 FCV(水素燃料電池車)である以前に、走りの素晴らしさに強く惹かれた

この記事は、 5 分で読めます。

水素を使った燃料電池車のトヨタMIRAIがフルモデルチェンジを行い2代目に進化しました。バッテリー搭載の電気自動車(BEV)に注目が集まる中で、未来の車と言われて久しい燃料電池車の最新モデルの実力やいかに。岡崎五朗さんのプロトタイプ試乗記をお届けしましょう。

今度のMIRAIの販売目標は20倍

今度のMIRAIの販売目標は20倍

FCV(水素燃料電池車)のMIRAIがフルモデルチェンジしてスタイリッシュなスポーツセダンに生まれ変わった。先代は世界初の量産燃料電池車というトピックはあったものの、お世辞にもカッコいいとは言えなかったし、運転席下にFCスタックと呼ばれる発電装置を搭載していたためシートが妙に高く、セダンとしては中途半端なパッケージングだった。そんなこともあり、2014年の発売から6年間での平均月販台数はわずか50台にとどまった。一方、トヨタは新型ミライで月販1000台を目指す。実に20倍である。

 

FCVが増えれば水素ステーションが増える

FCVが増えれば水素ステーションが増える1

トヨタが台数にこだわるのには理由がある。FCVは水素を空気中の酸素と反応させて発電するため走るには水素が必要だ。しかし国内の水素ステーションは大都市圏を中心に約130ヵ所しかない。しかも営業時間が短かったり、休業日が多かったりするのが実情。

FCVが増えれば水素ステーションが増える2

水素ステーションが不足しているからFCVが増えないのか、FCVが売れないから水素ステーションが増えないのか。まさにニワトリと卵の関係なのだが、だったら先にFCVを増やそうじゃないかというのがトヨタの考えだ。MIRAIが増えれば水素ステーションも増え、水素ステーションが増えればディーゼルの置き換えとして有望視されている水素バスや水素トラックも普及しやすくなる。その先にあるのは水素を「電気の缶詰」として利用する水素社会だ。現在は都市ガスやLPGから水素を生成しているのでカーボンフリーにはならないが、将来的には太陽光や風力で発電した電力によって水を電気分解した水素が広く流通するようになるだろう。

レクサスLSと同じプラットフォームで伸びやかなフォルムを獲得

レクサスLSと同じプラットフォームで伸びやかなフォルムを獲得1

レクサスLSと同じプラットフォームで伸びやかなフォルムを獲得2

そういう意味で、新型MIRAIはまさに水素社会推進の尖兵となるべく開発されたモデルだ。では「売る」ために具体的にどんな策を講じてきたのか。まずは冒頭で書いたデザインの刷新だ。新型MIRAIはレクサスLSと同じプラットフォームを採用。堂々たるボディサイズと伸びやかなフォルムは、車格が2クラス以上上がったような雰囲気を醸しだす。FCスタックをフロントフード内に移動させることでドライビングポジションも低くなりスポーツセダン的になった。

満充填で850km、満充填までわずか3分

満充填で850km、満充填までわずか3分

さらに、水素を入れるボンベの容量を増やし、1充填あたりの航続距離を従来の650kmから850kmへと伸ばした。しかも850km分の水素を充填するのにかかる時間は3分。EVに対するFCVの最大のメリットはここにある。なお、モーター出力は182ps。テスラのような爆発的な加速力はないが、低速から太いトルクが出る特性はなかなか力強い。少なくとも一般道で走っているかぎり不足を感じる人はいないだろう。

トヨタでもっとも静か、FCVである以前にすばらしい走り

トヨタでもっとも静か、FCVである以前にすばらしい走り1

もう一点、スペックには表れないものの、新型MIRAIの魅力度を大幅に引き上げているのがドライブフィールだ。まず、静粛性が高い。レクサスLSのプラットフォームに電気モーターを搭載したのだから当然といえば当然だが、クラウンはもちろんのことLSより静か、ということはトヨタでもっとも静かなクルマということになる。

トヨタでもっとも静か、FCVである以前にすばらしい走り2

加えてシャシーの出来がすばらしい。荒れた路面を走ってもしなやかに動く足が凹凸を効果的に吸収し揺れをボディに伝えない。ソフトなのにコシがあり、路面が荒れてくるほどに「ああいいクルマだな」と思える懐の深さをもっている。コーナーでは狙ったラインを正確にトレースする性能に驚いた。まさに「自分の運転が上手くなったように感じる」クルマの典型だ。正直なところ、FCVである以前に、走りの素晴らしさに強く惹かれた。

補助金次第ではクラウンと同じ価格に

補助金次第ではクラウンと同じ価格に1

補助金次第ではクラウンと同じ価格に2

補助金次第ではクラウンと同じ価格に3

そう、インフラ面で課題を残すFCVを売るためにトヨタがとった策は、とにかく魅力的なクルマにするということ。ど真ん中の直球勝負である。果たしてそれが受け容れられるのか。僕は、少なくとも水素ステーションがある程度普及している大都市圏ではかなり人気を集めるのではないかとみている。

補助金次第ではクラウンと同じ価格に4

この原稿を書いている時点で価格はまだ発表されていないが、圧倒的にスタイリッシュになると同時に車格が2レベル以上上がり、航続距離も走りも大幅に進化し、さらに最新の先進安全装備を備えつつ価格は先代(741万円)並みになるという。あとは補助金がどの程度になるか。先代は国から200万円、東京都の場合は都から100万円の合計300万円が支給された。新型では半分程度になると見込まれているが、それでもクラウンとほぼ同じ価格で手に入るなら、欲しいと考える人はたくさん出てくるのではないだろうか。特に充電設備がないためEVに乗りたくても乗れないタワーマンションの住人などにはもってこいの選択になるだろう。

(写真:トヨタ)

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※記事の内容は2020年12月時点の情報で制作しています。

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