バンライフ(VANLIFE)とは、荷物の運搬を目的とした商用車の「バン」と、生活を意味する「ライフ」を掛け合わせた造語で、寝泊まりするだけでなく、家事や仕事など車を中心に移動しながら生活する新しいライフスタイルのことです。
最近では、SNSやYouTubeなどでバンライフの様子を見ることも増えていることから、その自由なイメージに憧れている方も多いのではないでしょうか。そこで、この記事ではバンライフとはどんな過ごし方なのか、始め方やおすすめの車種、注意点、メリット・デメリットなど、バンライフの基礎知識を紹介します。
- バンライフの魅力は好きな場所で暮らせること
- キャンピングカーやワゴン車、軽トラックが使われていることが多い
- 車中泊の場所やお風呂、トイレなどを探すのがたいへん
バンライフとは?
そもそも「バンライフ」という言葉は、ラルフローレンの元デザイナーのフォスター・ハンティントン氏が、2011年にバンでの生活をSNSで発信したのが始まりだといわれています。
車に衣食住に必要なものを積んで、移動しながら生活するミニマルなライフスタイルをバンライフと呼びます。ただし、今のところ明確なバンライフの定義はなく、家を持たずに車だけで生活したり週末だけ車で過ごしたりするなど、さまざまな過ごし方で楽しまれています。
また、バンライフと聞くと「車中泊」をイメージする方もいるでしょう。しかし、バンライフは車中泊とは少し違います。車中泊は車で寝泊まりをするという意味ですが、バンライフは寝泊まりだけでなく、旅をしたり食事をしたりと、車で生活すること全般をいいます。
気になるバンライフの過ごし方
バンライフの過ごし方は、目的や人によってさまざまです。そのため、自由に過ごし方を決められますが、これから始める方の中には、具体例を知りたい方もいるのではないでしょうか。そこで、食事や仕事など、バンライフでの過ごし方を紹介します。
食事
車の装備によって、食事のバリエーションは異なります。ミニキッチンが備わっているキャンピングカーであれば、簡単に調理が可能ですが、そのような車は高価なものが多く、手が届きにくいといえます。そのため、バンライファーの多くは、ポータブル電源を用いてIHクッキングヒーターや電子レンジなどを使って、自炊を楽しんでいます。
また、旅先で地元の食材を調達して食べるのも、バンライフの楽しみのひとつ。もちろん、外食やテイクアウトなどで手軽に食事をすることも可能です。テーブルやイスを設置すれば、各地の景色を見ながら食事が楽しめるでしょう。
仕事・収支
バンライフのスタイルによって、仕事への取組み方はさまざまです。貯金をしてからバンライフを始める方もいれば、長期休暇や週末を利用して楽しむ方もいます。
また、YouTuberやウェブライターなど、働く場所を選ばない仕事で収入を得ながら、車で生活している方も多くいます。ここでは、夫婦2人で車を中心に生活する場合の1ヵ月の生活費の例を見てみましょう。
<生活費の一例>
費用 | 金額 | 詳細 |
---|---|---|
食費 | 40,000円 | 自炊中心、ただし節約はあまりしない |
ガソリン代 | 20,000円 | 毎日運転するが、移動距離は少なめ |
入浴代 | 10,000円 | 温泉や銭湯などを毎日使用 |
通信費 | 10,000円 | スマホ2台・ポケットWi-Fi |
洗濯代や宿泊代などその他 | 20,000円 | 洗濯はコインランドリーを週1回 RVパークやキャンプ場などを使用 |
合計 10万円程度 |
移動距離や自炊の頻度など、暮らし方によってもかかる費用は異なりますが、始めるにあたっての参考にしてみてはいかがでしょうか。
トイレ・お風呂
トイレやお風呂はキャンピングカーを所有していなければ、公共の施設を利用することになるでしょう。実際、バンライフをしている方は、公共のトイレやお風呂をうまく利用しています。車中泊をする場合は、トイレにすぐ行ける場所に駐車すると安心でしょう。
<トイレ>
- 道の駅や高速道路のサービスエリアなど、公共の施設を利用する
- 車内で使える防災用の簡易トイレを用意する など
<お風呂>
- 温泉や銭湯を利用する
- ネットカフェのシャワーを利用する など
住所
住民票などの居住地をどうしているかも気になるポイントです。家を引き払って車で生活している場合、実家やシェアハウス、いっしょに住んでいる友人宅に住所を置いているケースが多くあります。
また、郵便物や荷物は、何も指定がなければ住民票に記載の住所に届きますが、コンビニや運送会社、郵便局を指定すれば旅先でも受け取れて便利です。また、商業施設などに置いてある宅配ロッカーを利用する方法もあります。
維持費
一般の乗用車と同様、バンライフで使用する車にも税金やメンテナンス費などがかかります。そのため、あらかじめ年間どのくらいかかるか計算しておくと安心です。
<車にかかる費用>
- 自動車税(種別割)
- 自動車重量税
- 車検代
- 保険料(自賠責保険や任意保険)
- ガソリン代
- 駐車料金
- メンテナンス代など
また、車を所有するには、保管場所や、またその保管場所を証明する車庫証明が必要です。駐車場がなければ、月極駐車場などを借りる必要があるでしょう。
実際バンライフってどうなの?
バンライフのイメージはできたものの、実際に行動するのはまだ不安に思う方もいるのではないでしょうか。その不安を解消するには、実際にバンライフをしている方の実態を知るのが一番です。そこで、YouTubeなどで活躍するバンライファー2組を紹介します。
期間は1年!旅の目標は定住先を探すこと
しーさん&しんさん夫婦は、YouTubeで「りんご夫婦」の名前でチャンネルを持ち、生活の様子を発信しながら定住先を探す旅をしています。1ヵ月の生活費は15万円程度。収入はYouTubeの収益のみで、あとは2人で貯めた貯金で生活しています。
1つの地域での滞在期間は2~3日で、あらかじめ大まかなスケジュールを組んでいるそうです。りんご夫婦は「今まで行ったことのない場所を回るのは新鮮で心が開放される」と語っていました。
あえてゴールは決めずに、心に正直にバンライフを楽しんでいます!
ソロバンライファーのruiさんは、特にゴールは決めず、ライターや映像編集者、サウンドデザイナーの仕事をしながらバンライフを楽しんでいます。車内は指導者のもとで1ヵ月半かけて整備し、住みながら手を加えていったそうです。バリ島をイメージした内装は、クオリティが高く、魅力的な空間となっています。
ruiさんのバンライフの生活費は、月12万円程度。定住時に比べて収入は減少したものの、支出も少なくなったことで大きな影響はないそうです。一方、「定住していた頃に比べて精神的に豊かになり、達成感のある生活が送れている分、QOL(生活の質)は上がった」と感じているようです。
バンライフの始め方
具体的な過ごし方がわかり、理想のバンライフがイメージできてきた方も多いのではないでしょうか。では、実際にバンライフを始めるためのステップを詳しく見ていきましょう。
1. 車を選ぶ
バンライフでは多くの時間を車で過ごすことになるので、車選びが重要です。おもに次のような条件を基に車選びをするといいでしょう。
<車選びの条件>
- 床がフラットになる
- 車内の広さにゆとりがある
- 移動する場所に合った走行性能を選ぶ
新車は一からカスタマイズできるので自分好みに仕上げやすく、中古車であれば費用が抑えられたりオプション装備がついていたりするなど、それぞれにメリットがあります。また、寝泊まりできる装備を備えているキャンピングカーなら、DIYの必要はありません。
2. 内装や設備を整える
車が決まったら、快適な空間にするために内装や設備を整えます。キャンピングカー以外の車を利用するバンライファーの多くは、車中泊できる仕様にDIYをしています。自分でDIYができない方は、プロに頼むのもいいでしょう。
<DIY例>
- 後部座席を撤去してフルフラットにする
- 天井や壁に木材を貼り付ける
- トイレやコンパクトなキッチンを設置する
3. 車中泊に必要なものをそろえる
最後に、車中泊で必要なグッズをそろえます。車内のスペースには限りがあるので、コンパクトかつ複数の役割を持つものを選ぶと荷物が減らせるのでおすすめです。代表的な車中泊グッズには次のようなものがあります。
<あると便利なもの>
- マット
- 寝袋
- ランタン
- コンテナ
- イス
- テーブル
- 遮光カーテン / サンシェード
- 小型サーキュレーター
- 車用網戸
- タープ
- ポータブル電源
バンライフに適した車の条件
バンライフで使用する車に決まりはありませんが、適した車の条件は押さえておくといいでしょう。ここでは、バンライフの相棒になる車の選び方を紹介します。
室内の広さ
バンライフでは、長時間でも快適に過ごせる広さが必要です。例えば大人2人であれば、居住空間がセミダブルベッド程度(長さ190cm、幅120cm程度)あれば、過ごしやすいでしょう。高さは、快適に座れるかが重要です。マットやイスに座っても、頭上に十分な高さがあれば安心でしょう。
走行性能
必要な走行性能は、おもに走行する場所や道の特徴によっても異なります。高速道路や急な坂道を多く走るなら、ターボ車などパワフルな走りが叶う車がおすすめです。例えば軽自動車のノンターボ車の場合、スピードが出しにくく走行がストレスになる可能性があります。
また、雪道や路面の悪い山道を走行するなら、滑りやすく起伏の激しい路面でもスムーズに走れる4WDがおすすめです。
ボディサイズ
バンライフに慣れて行動範囲が広がると、ボディサイズが気になってくるケースも考えられます。例えば、初めは大きな車でも入りやすい整備された場所がメインでも、慣れてくるとアクセスしにくい場所にも行くようになるでしょう。
そういった場合、整備されていない道や狭い山道なども通る可能性があるので、小回りの利くコンパクトな車も候補に入れるといいでしょう。
バンライフにおすすめの車とは?
おもにバンライフに使われている車には、キャンピングカーやワゴン車、軽トラックなどいくつかの種類があります。
ここでは、バンライフにおすすめの車をタイプ別に見ていきましょう。
キャンピングカー
キャンピングカーは、広い居住空間と優れた設備で、まるで自分の部屋のように快適に過ごせます。一般的なキャンピングカーは「キャブコン」と呼ばれ、トラックの荷台に居住スペースを架装した車です。ほかにも「バンコン」と呼ばれるワンボックスタイプのキャンピングカーなどもあります。
代表的なメーカーには国内最大級のキャンピングカーメーカーのナッツや、1986年創業のVANTECHなどがあります。
ワゴン車
広くスクエアな形状でバンコンと似ているワゴン車。シンプルな作りになっているので、内装も自分好みにアレンジしやすいでしょう。室内空間も広いことから、寝るスペース以外に、調理スペースやリビングなども確保しやすいので、長期のバンライフを目的としている方にもおすすめです。
代表的な車には、カスタマイズしやすいトヨタ「ハイエース」や、標準装備で折りたたみタイプのベッドが搭載されている日産「キャラバン」などがあります。
軽トラック
軽トラックは、荷台に居住部分のシェルやテントのような幌(ほろ)を取り付けて居住空間を作ります。小回りが利くため、狭い道でもスムーズに運転できます。シェルは完成品を取り付ければ簡単ですが、中には自作する方もいます。
代表的な車には、燃費性能を追求したパワフルな走りが魅力のダイハツ「ハイゼットトラック」などがあります。
軽自動車
軽自動車は車内が狭いので、一人での利用や短期間の生活などを目的としている方に向いています。また、車両本体価格が安いので、初期費用や維持費が抑えられるなどコスト面でのメリットもあります。広さが心配なところですが「軽バン」と呼ばれる車を選べば室内空間も確保しやすいでしょう。
バンライフを行う軽自動車で代表的な車には、スズキ「ハスラー」、ホンダ「N-VAN」、スズキ「エブリイ」などがあります。どれもシートをフルフラットにでき、足を伸ばせます。
トレーラー
トレーラーは自走するのではなく、居住スペースを別の車で牽引して利用します。750kg以内のトレーラーなら牽引の免許は不要なので、運転もしやすいでしょう。トレーラーを外して車だけでも使用できる便利さに加えて、キャンピングカーに匹敵するほどの居住性の高さが魅力です。
主要メーカーには、インディアナ・RV、ケイワークスなどがあります。ケイワークスは、ファッションブランドとコラボなどしているので、おしゃれなトレーラーを探している方におすすめです。
バンライフの注意点
自由な生活が魅力のバンライフですが、マナーやルールは守らなければなりません。また、防犯や暑さ・寒さ対策などを徹底することで、バンライフを安全かつ快適に過ごすことができるでしょう。ここでは、バンライフを始めるにあたって注意してほしい点をまとめました。
安全運転を心掛ける
バンライフでは、行ったことのない場所を訪れる機会が多いので、交通事故に気を付けなくてはいけません。慣れない道では事故を起こしやすいので、安全運転を心掛けましょう。また、自分の身を守るためにもドライブレコーダーをつけておくと安心です。
車中泊の場所選びに注意する
車内泊は、RVパークやキャンプ場など、車中泊を許可された場所を選びましょう。道の駅は原則として休憩や仮眠などの短時間の利用を目的としているので宿泊では使用できません。車内泊の場所は、事前に確認しておくと安心です。
暑さ・寒さ対策をしっかりする
暑さ・寒さ対策をしないと、バンライフを送るうえでストレスになります。暑い時期には、扇風機やサーキュレーターを活用したり、日陰に駐車したりすると暑さがやわらぎます。寒い時期には、寝袋や防寒着、湯たんぽ、電気毛布などで寒さ対策をしましょう。
施設利用やゴミ捨てのルールを守る
近年、バンライフの人気が高まったことで、マナー・ルール違反が問題視されています。次のようなことに注意しましょう。
- 大量のゴミを不法投棄する
- 許可なく公共の電源を利用する
- 公共駐車場でキャンプ行為をする
- 車中泊時にアイドリングする
給油はできるときにしておく
バンライフでは、想定外の事態が起きることもあるので、こまめに給油しておきましょう。例えば、人口の少ない地域はガソリンスタンドが少なく、営業時間が短い傾向があります。早めの給油に加えて、ガソリンスタンドの場所や営業時間を確認しておくといいでしょう。
防犯対策をする
車から離れた際に、車上荒らしに遭う可能性もあります。貴重品は肌身離さず持ち歩く、窓が割れにくくなるよう防犯フィルムを貼るなど、防犯対策はしっかりしておきましょう。治安の悪い場所や人気のない場所に駐車して車から離れる際は、特に警戒してください。
火の扱いに注意する
車内は密室なので、一酸化炭素中毒や火災の危険性を考えると、火はなるべく使わないほうが安全でしょう。使用する場合は、下記に注意してください。
- 窓を開ける
- 倒れやすい火気は使用しない
- 燃えやすいものは火気の近くに置かない
- 火気から目を離さない
バンライフのメリット・デメリット
バンライフはメリットばかりがフォーカスされがちですが、デメリットもあります。人によって感覚は異なりますが、バンライファーが実際に感じているバンライフのメリット・デメリットを紹介します。
メリット
- 自由に移動しながら生活できる
- 毎日が新鮮で非日常を味わえる
- 絶景に巡り合えることがある
- 家を持たないバンライファーなら家賃や光熱費がかからない
- 旅先の宿泊費が節約できる
- 緊急時などの防災面に強い
- 訪れた場所で新しい出会いがある
- 旅先のルートを自由に変えることができる
- 旅先の地方名物や食材が楽しめる
デメリット
- 大雨や台風、吹雪などの天候の影響を受けやすい
- ゴミを捨てる方法を検討しながら移動しなければならない
- 水回りの設備が整っていない
- 車中泊が可能な駐車場を探す必要がある
- 寒さや暑さに柔軟に対応しないとストレスになる
- 住宅と同じように電気を不自由なく使うのは難しい
- 長期でバンライフする場合は仕事が限定されてしまう
- 車だけで生活が完結できない
- ご近所付き合いがない
気軽に週末からバンライフを始めてみよう
自由なイメージのあるバンライフですが、始めるには車や生活資金の準備など、いくつかのハードルもあります。そのため、いきなり車で生活し始めるのは勇気がいるかもしれません。バンライフに明確な定義はないので、まずは週末だけなど、気軽に始めてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
Q1:バンライフとは?
A:バンライフとは、車で移動しながら生活することをいいます。ただし、明確な定義はありません。週末だけ楽しむ方もいれば、家を持たずに車で生活する方もいます。バンライフをしている方をバンライファーと呼びます。
Q2:バンライフのメリット・デメリットは?
A:バンライフの最大のメリットは、場所や時間にとらわれず自由に生活できることです。移動しながら生活するので毎日が新鮮で非日常を味わえるでしょう。デメリットは、トイレにすぐに行けない、車中泊の場所の確保がたいへん、などが挙げられます。
※この記事は2023年4月時点の情報で制作しています