残クレのしくみを徹底解説！メリット・デメリット、注意点をFPが詳しく解説

残クレとは残価設定クレジットのことで、ディーラーで用いられるローンの一種です。車両本体価格に対して残価を設定し、据え置いて返済額を算出するのが残クレの特徴ですが、そのしくみをわかりにくく感じている方もいるでしょう。

そこで、残クレのしくみやメリット・デメリットについて、ファイナンシャルプランナーの伊藤真二さんの解説を併せて見ていきましょう。

残クレとは？

残クレは、新車購入の際にディーラーで用いられているローンのひとつです。近年では、ディーラーが推奨していることから、お得に新車を購入できる方法として広まっています。

残クレでは、最終返済時の想定残価を設定し、車両本体価格に対して残価を据え置くことで、月々の返済額が抑えられるしくみとなっています。そのため、月々の返済額を抑えて車を手に入れたい方から人気の方法です。

ただし、返済後の選択肢が、返却もしくは同じメーカーの車種に乗り換えるなど、一般的なローンと異なります。

残クレのしくみ

残クレは、月々の返済額の計算方法や最終返済時の選択肢が通常のローンと大きく異なります。そのため、利用する際はそのしくみをしっかり理解しておく必要があります。ここでは、残クレのしくみについて詳しく見ていきましょう。

月々の返済額の計算方法

一般的なローンでは、借入期間に応じて金利がかかり、利息を含めた車両本体価格の総額を返済期間で割って月々の返済額を算出します。

一方、残クレでは、車両本体価格から残価を据え置いた金額を返済期間で割って月々の返済額を算出します。ただし、金利は残価を含めた車両本体価格全額に対してかかります。

このような違いから、月々の返済額を抑えられるしくみとなっています。なお、想定残価は車種やメーカーによっても異なります。

最終返済時の選択肢

一般的なディーラーローンは、車を購入する方法です。そのため、ローンの返済が終わると、車は契約者の所有物となります。

一方、残クレでは、最終返済時に「乗り換える」「返却する」「乗り続ける」の3つの選択肢から選ぶことになります。

・乗り換える
同じメーカーの新車に乗り換えるには、まずは車を返却して据え置いた残価を精算します。また、最終返済時の車の状態や走行距離に応じて、支払いが発生することがあります。

・返却する
車を返却することで、据え置いた残価を精算する方法です。ただし、車の状態や走行距離に応じて、支払いが発生することがあります。

・乗り続ける
残クレで購入した車に乗り続けるには、据え置いた残価を現金で一括返済もしくは、改めてローンを組んで（再クレジット）分割で返済します。なお、再クレジットの際の金利は、再クレジット申込み時点での金利が適用されるのが一般的です。

残クレのメリット

まずは、残クレのメリットから見ていきましょう。毎月の返済額が抑えられること以外にも、乗り換えやすさや下取り価格の保証など、さまざまなメリットがあります。

毎月の返済額が抑えられる

車両本体価格の全額を支払うローンと比べて、残価を据え置く残クレでは毎月の返済額を抑えることができます。そのため、高額な車種や上位グレードなどにも手が届きやすいというメリットがあります。また、ディーラーが推奨しているローンのため、金利のキャンペーンが実施されていたり値引きが受けやすかったりすることもあるでしょう。

短期間で乗り換えられる

残クレは、3年や5年などでの契約が一般的です。通常のローンでは月々の負担が大きく、乗り換えるにもお金がかかるため、そのような短期間での乗換えは難しいでしょう。しかし、月々の返済額が安い残クレであれば、短期間で新車に乗り換えることができます。

また、残クレは頭金なしでも審査に通るケースもあるので、乗換えがしやすいのも特徴です。

ディーラーローンより金利が低い

ディーラーローンの金利は4〜8%と比較的高く設定されています。一方で、残クレもディーラーが提供するローンですが、金利は2〜5%程度が一般的です。キャンペーンなどが実施されていれば、1％台で提供されていることもあります。

下取り価格が保証される

車の価値は、新車登録からの経過年数や走行距離によって決まります。そのため、長く乗るほど価値が下がっていくのが一般的です。残クレでは、最終返済時の下取り価格が保証されていることが多いため、極端に価値が下がってしまうのを防ぐことができます。ただし、別途条件が定められている場合があるので、あらかじめ条件の確認が必要です。

同じ残価設定でもっとお得にカーライフを始める

残クレのデメリット

次に、残クレのデメリットをご紹介します。通常のローンと違って原状回復義務や走行距離制限など、さまざまな制約が設けられているため、契約前にしっかり確認しておきましょう。

車両本体価格の全額に金利がかかる

残クレでも、通常のローンと同様に金利がかかります。残クレでは残価を据え置く分、金利がかかる部分が少なくなるイメージがありますが、車両本体価格の全額に金利がかかるので、残価分に対しても利息が発生します。そのため、車を返却する場合などは、損に感じてしまうこともあるでしょう。

原状回復義務がある

残クレでは下取り価格が保証されている一方で、車の価値を保つためにさまざまな制約が設けられています。原状回復義務もそのひとつで、車を返却する際には、契約時の状態に戻さなくてはいけません。また、原状回復にかかる費用は契約者負担となるのが一般的なので、返却する際は修理やメンテナンスにかかる費用が生じる可能性があります。

なお、一般的に買い取って乗り続ける場合は、原状回復は不要になります。

走行距離制限がある

車は走行距離が長くなるほど価値が下がるため、残クレでは走行距離制限が設けられているのが一般的です。なお、メーカーによって設定される上限距離は異なり、希望に応じて相談できるケースもあります。

一般的にマイカーの走行距離は年間10,000km程度が目安とされていますが、車の利用頻度や長距離走行の有無によっても走行距離は変わります。残クレでは制限距離を超えた場合、超過料金が発生することもあるので、走行距離が長めの方は注意が必要です。

改造やカスタマイズが禁止されている

残クレでは原状回復義務があることから、車に傷などをつけるおそれがある改造やカスタマイズは禁止されています。契約内容によっては、元に戻せる範囲では認められているケースもありますが、返却する際に原状回復費用がかかる可能性も理解しておかなくてはいけません。

なお、メーカーオプションやディーラーオプションの追加は、契約時に依頼できるのが一般的です。カーナビやバックカメラなど、必要な機能があれば、契約時に追加しておくのがおすすめです。

ほかのメーカーの車に乗るのがたいへんになる

残クレは手軽に乗り換えられるのが魅力の一方で、乗換えは同じメーカーの車種に限られます。また、ほかのメーカーの車に乗り換えるためには、一括精算もしくは再クレジットで残価分を返済しなくてはいけません。

そのため、せっかく残クレで月々の返済額を抑えられても、最後にまとまったお金がかかっては家計の負担になってしまいます。このようなしくみから、結果的にほかのメーカーの車に乗り換えるのがたいへんになってしまいます。

残価よりも下取り価格が低額な可能性もある

残クレでは、残価相当の下取り価格が保証されていることがあります。しかし、下取り価格の保証には条件が設けられていることが多いため、車の状態や査定内容によっては、下取り価格が低額となる可能性があります。

その結果、残価よりも下取り価格が低額となった場合、支払いが発生することがあるでしょう。そのため、保証される下取り価格や保証の条件は、しっかりと確認しておくことが大切です。

各メーカーの残クレの特徴は？

ディーラーで提供されている残クレですが、メーカーによって呼び方や特徴は異なります。そこで、Honda、トヨタ、マツダ、日産、スズキの5社について、各メーカーの残クレの特徴を見ていきましょう。

Honda「残価設定型クレジット」

Hondaの残クレ「残価設定型クレジット」は、実質年率3.5%、返済額は毎月3,000円以上、ボーナス返済は年2回まで、借入期間は3〜5年の中から1年単位で選ぶことができます。なお、車種によっては2年契約も可能です。

また、ロングセラーの軽自動車「N BOX」には、5年契約でボーナス払いなしの場合、月々18,700円（初回23,871円）で契約が可能です。

トヨタ「残価設定型プラン」

トヨタの「残価設定型プラン」は、店舗によって金利が異なります。なお、ネッツトヨタ埼玉のオンラインの見積もりシミュレーション（オンライン商談用 割賦商品・残価据置）では、残価設定型プランの金利は4.5%となっています。

「ヤリス」を5年契約、ボーナス払いなしの残クレで購入した場合、月々35,300 円（初回37,049円）で契約が可能です。

マツダ「残価設定型クレジットプラン（マツダスカイプラン）」

マツダ「残価設定型クレジットプラン（マツダスカイプラン）」は、実質年率2.99%と低金利が魅力です。ボーナス払いは2回まで可能、月間の走行距離などを含めて月々の返済額が決まります。

なお、「MAZDA2」15Cを3年契約でボーナス払いなしの残クレで購入した場合、月々18,674円（最終返済1回前18,685円）で契約が可能です。なお、月間の走行距離や契約内容によって月々の返済額は変わります。

日産「残価設定型クレジット」

日産「残価設定型クレジット」は、実質年率4.9%、ボーナス返済は年2回まで、借入期間は3〜5年の中から1年単位で選ぶことができます。また、月間の走行距離は1,000kmと1,500kmから選択が可能です。

なお、「ノート」のSグレードを、5年契約、月間の走行距離1,000km、ボーナス払いなしの残クレで購入した場合、月々30,800円（初回35,793円）で契約が可能です。

スズキ「残価設定クレジット（かえるプラン）」

スズキ「残価設定クレジット（かえるプラン）」は、軽乗用車が実質年率3.9%、登録車が実質年率2.9％、借入期間は3〜5年の中から1年単位で選ぶことができます。

なお、「ジムニー」XGグレードを、5年契約、ボーナス払いなしの残クレで購入した場合、月々25,500円（初回27,653円）で契約が可能です。

残クレの契約から満了までの流れ

残クレを実際に利用する場合、契約から満了までどのような流れで行うのか見ていきましょう。

1. 車種を選ぶ

まずは、車種を選びます。欲しい車種や好きなメーカーが決まっていれば選びやすいでしょう。しかし、異なるメーカーの車種で迷っている場合は、各ディーラーに出向いて決める必要があります。また、同じ価格帯やタイプでも、機能面での違いがある点や、実際に見ながらの比較が難しい点は理解しておく必要があるでしょう。

2. 審査を受ける

車種が決まったら、ディーラーで申込みをします。必要書類を用意して店頭で契約手続きを行いましょう。中には、運転免許証のみで審査が受けられるメーカーもあります。なお、最短1日などで審査結果がわかる場合もありますが、審査にかかる時間はメーカーによっても異なります。急いでいる場合は、あらかじめ確認しておくと安心です。

3. 納車

審査通過後、ディーラーで車の登録手続きなどが行われます。車の在庫状況によっては、納車に時間がかかることがあります。早めの納車を希望する場合は、契約時に納車日の目安を確認しておくのがおすすめです。

4. 返済

車が納車されると、指定の返済日から返済が始まります。なお、契約時に指定した銀行口座からの口座振替で支払うのが一般的です。

5. 契約満了

最終返済前に、車に乗り換えるか乗り続けるかを選びます。契約満了時の状況によって、残クレで購入した車に乗り続けるか、乗り換えるかが選べるのも残クレの特徴です。なお、再クレジットを組んで乗り続ける場合は、改めて審査を受ける必要があります。

残クレは繰上返済できる？

毎月の返済額以外に、前倒しで返済することを繰上返済といいます。また、メーカーによっては、残クレでも繰上返済が可能な場合もあります。なお、繰上返済の最低額や金額の単位、可能な期間など、繰上返済の条件はメーカーによって異なります。

また、メーカーによっては、一括返済のみを認めているケースもあるので、定期的に繰上返済をして利息を減らしたいと考えている場合は、契約時に確認しておきましょう。

残クレが向いているケース

残クレにはさまざまなメリット・デメリットがありますが、結局はどのような方に向いているのでしょうか。ここでは、残クレが向いているケースについて見ていきましょう。

車が必要な期間が決まっている

残クレは3〜5年程度の短期契約が一般的で、メーカーによっては2年契約ができる車種もあります。そのため、車が必要な期間があらかじめ決まっている方におすすめです。なお、3年未満で豊富な車種から選びたい場合は、ほかの選択肢を考えたほうがいいでしょう。

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常に新型の車に乗りたい

残クレでは3〜5年で新しい車に乗り換えられるので、常に新型の車に乗ることができます。ただ、これまで車のモデルチェンジは4年程度で行われるのが一般的でしたが、最近では8年などそのスパンは長くなっています。そのため、選ぶ車種によっては、長期間モデルチェンジが行われていない場合もあるでしょう。

ずっと同じメーカーの車に乗りたい

残クレでは、同じメーカーの新車に月々の負担を抑えて乗り続けられるため、特定のメーカーの車に乗り続けたい方におすすめです。また、乗り換える際、乗っていた車は返却するだけでいいので、売却や廃車などの手間がかからない点もメリットといえるでしょう。

乗り出しの費用を抑えたい

通常のローンでは、頭金を用意するのが一般的です。そのため、税金などの初期費用と合わせてまとまった資金が必要です。一方、残クレは頭金不要でローンが組めることが多いので、乗り出しの費用を抑えたい方にもおすすめです。ただし、各種税金や自賠責保険料、登録諸費用などの初期費用は現金で支払わなくてはいけません。

同じ残価設定でもっとお得にカーライフを始める方法

残クレの魅力は月々の返済額が抑えられる残価設定にありますが、さまざまな制約があるのも事実です。一方、同じ残価設定でも、カーリースであればもっとお得にカーライフを始めることができます。そこで、同じ残価設定でも、残クレよりもカーリースのほうがお得な理由をご紹介します。

残価を差し引くから月額料金がお得

残クレでは車両本体価格に対して残価を据え置きます。そのため、最終的に車を返却するか、残価分を支払って買い取ることになります。一方、カーリースでは車両本体価格から残価を差し引いて月額料金を計算するため、月々の料金を抑えることができます。また、残価精算のないカーリースであれば、まとまった出費が発生する心配もありません。

ほかにも、残クレでは残価にも金利がかかりますが、カーリースにはそもそも金利という概念がない点もメリットといえるでしょう。

契約期間の選択肢が豊富にある

残クレでは3年、4年、5年などと契約期間が限定されています。一方、リース会社によっても異なりますが、1年から最長11年の中から、1年単位で契約期間を選ぶことができるカーリースもあります。そのため、車の用途やライフプラン、予算に合わせて契約することが可能です。

契約期間が1〜11年の中から選べるカーリースはこちら

ローンと同様に最新の車種が選べる

多くのメーカーではほとんどの車種が残クレでの購入に対応しています。一方、リース会社によっても取扱車種は異なりますが、国産メーカーの全車種、全グレードを扱っているカーリースもあります。そのため、そういったリース会社を選べば、ローンと同様の選択肢の中から、好きな車種を選ぶことができます。

維持費も含めて定額化できる

残クレで購入した場合、月々の返済額は安くできても、維持費は支払わなくてはいけません。一方、カーリースの月額料金には、各種税金や自賠責保険料、各種手数料などが含まれているため、別途用意する必要がありません。このように維持費も含めて定額化できるので、車にかかる費用をフラットにすることができます。

残価設定で月々10,000円台から新車に乗れるサービスが人気

多くのメーカーが残クレを用いているように、さまざまなリース会社がカーリースを提供しています。中でも、契約期間の選択肢が1年から11年と豊富で、業界最安水準の月額料金が魅力の「おトクにマイカー 定額カルモくん」がおすすめです。ここでは、定額カルモくんの魅力について見ていきましょう。

走行距離を無制限にできる

カーリースでは残クレのように走行距離制限が設けられているのが一般的です。しかし、定額カルモくんでは、7年以上で契約するだけで走行距離が無制限になるため、制約を気にせずに、リース車に乗ることができます。また、6年以下の契約でも、月間1,500kmと余裕を持った距離制限なので、安心して利用できるのではないでしょうか。

原状回復のリスクを軽減できる

走行距離制限と同様の規則として、カーリースには原状回復義務があります。しかし、定額カルモくんでは、車検を定額化できるメンテナンスプランに原状回復費用補償が含まれているため、原状回復の費用負担をカバーできます。そのため、残クレの原状回復がデメリットに感じていた方にもおすすめです。

将来的に車がもらえる

カーリースは残クレと同様に返却を前提としたサービスです。しかし、定額カルモくんには月々500円プラスするだけで、契約満了時にマイカーになる「もらえるオプション」があります。7年以上で契約の場合に加入できるので、愛着のある車に長く乗りたい方にもおすすめです。

契約満了まで保証が延長できる

定額カルモくんのカーリースでは最長11年契約が可能ですが、長期での契約は不安だという方もいるでしょう。そういった方のために、定額カルモくんには契約満了までメーカー保証と同等の保証が延長できるプランがあります。そのため、安心して契約満了まで乗り続けることができます。

ローン審査に不安がある方でも利用している

残クレは比較的審査に通りやすいといわれていますが、それでも審査に不安がある方もいるでしょう。定額カルモくんの利用者の中には、ローン審査に落ちた経験がある方もいます。そのため、審査に不安がある方にもおすすめです。

また、残クレでもカーリースでも、審査に通過しなくては利用できません。そのため、まずは利用できるかどうか「お試し審査」で確かめてみてはいかがでしょうか。

残クレのしくみを理解して検討しよう

残クレは通常のローンと違ってしくみが複雑です。そのため、月々の返済額が抑えられるというメリットだけで選ぶと後悔してしまう可能性もあります。利用を検討する際は、しくみを理解した上で、購入してから車を手放すまでにかかる費用をあらかじめシミュレーションしておくのがおすすめです。

よくある質問

Q1：残クレってどんなサービス？

A：残クレの一番のメリットは、月々の返済額を抑えられる点です。また、残クレは同じメーカーの車への乗換えや返却を前提としたローンです。そのため、契約満了後も車を手元に残しておくためには、最終返済時に据え置いた残価を精算しなくてはいけません。

Q2：残クレの注意点とは？

A：残クレでは車の価値を保つために、走行距離制限や原状回復義務などの制約があります。そのため、通常のローンと比べると、車の使用に気を使わなくてはいけません。また、ほかのメーカーの車に乗り換える際にはまとまった資金が必要となることも注意点といえるでしょう。

※この記事は2022年5月時点の情報で制作しています