2021年11月の乗用車全体(軽自動車を含む)の販売台数は29万1,665台、前年比は86.6%と、前月より19ポイント改善したものの、依然として厳しい数字となっています。レクサス、トヨタ、マツダの前年比は平均を下回る一方、三菱は115.6%、ホンダも前年並みまで回復しています。
軽自動車を除く10月の新車販売ランキングでは、トヨタヤリスが2020年7月以来16ヵ月続けた王座から転落、代わりにカローラが2020年3月以来の首位に輝きました。
一方、10月は波乱の展開となった軽自動車(乗用車)ですが、11月はホンダN-BOX、ダイハツタント、スズキスペーシア、日産ルークスのスーパーハイトワゴン4強が上位に復帰し、平静を取り戻したように見えます。今回も自動車評論家の島崎七生人さんに詳しく解説をしてもらいましょう。
国産乗用車販売台数 2021年11月(軽自動車を除く)
順位 | 車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | カローラ | トヨタ | 13,631 | 141.2 |
2 | ヤリス | トヨタ | 11,940 | 59.9 |
3 | ルーミー | トヨタ | 11,654 | 127.9 |
4 | ノート | 日産 | 9,412 | 271.9 |
5 | アクア | トヨタ | 7,251 | 209.6 |
6 | ヴォクシー | トヨタ | 6,711 | 97.8 |
7 | ライズ | トヨタ | 6,217 | 58.5 |
8 | フィット | ホンダ | 6,074 | 84.8 |
9 | アルファード | トヨタ | 5,423 | 53.6 |
10 | ヴェゼル | ホンダ | 5,381 | 247.2 |
11 | フリード | ホンダ | 5,114 | 74.5 |
12 | RAV4 | トヨタ | 4,510 | 84.6 |
13 | プリウス | トヨタ | 4,089 | 76.5 |
14 | フォレスター | スバル | 3,975 | 234 |
15 | ノア | トヨタ | 3,888 | 87.4 |
16 | シエンタ | トヨタ | 3,808 | 53 |
17 | ロッキー | ダイハツ | 3,615 | 258.2 |
18 | セレナ | 日産 | 3,219 | 72.6 |
19 | パッソ | トヨタ | 3,054 | 120.1 |
20 | ハリアー | トヨタ | 2,992 | 30.2 |
21 | ステップワゴン | ホンダ | 2,916 | 127.1 |
22 | ソリオ | スズキ | 2,880 | 98.1 |
23 | スイフト | スズキ | 2,760 | 132.8 |
24 | ランドクルーザーW | トヨタ | 2,639 | 65.6 |
25 | MAZDA2 | マツダ | 2,617 | 121.3 |
26 | オデッセイ | ホンダ | 2,252 | 130.9 |
27 | キックス | 日産 | 1,924 | 44.8 |
28 | クラウン | トヨタ | 1,619 | 92.8 |
29 | インプレッサ | スバル | 1,614 | 41.9 |
30 | エスクァイア | トヨタ | 1,583 | 125.9 |
31 | トール | ダイハツ | 1,403 | 98.2 |
32 | CX-30 | マツダ | 1,393 | 88.2 |
33 | C-HR | トヨタ | 1,288 | 58 |
34 | CX-8 | マツダ | 1,206 | 231 |
35 | ジムニーW | スズキ | 1,182 | 73.2 |
36 | リーフ | 日産 | 1,162 | 102.4 |
37 | レヴォーグ | スバル | 1,085 | 47.6 |
38 | MAZDA3 | マツダ | 1,079 | 78.2 |
39 | シビック | ホンダ | 933 | 84.5 |
40 | シャトル | ホンダ | 925 | 121.1 |
41 | 86 | トヨタ | 887 | 246.4 |
42 | デリカD5 | 三菱 | 830 | 84.3 |
43 | カムリ | トヨタ | 821 | 58.9 |
44 | クロスビー | スズキ | 820 | 56.5 |
45 | エクリプスクロス | 三菱 | 645 | 2150 |
46 | BRZ | スバル | 638 | 発表なし |
47 | エクストレイル | 日産 | 631 | 33.8 |
48 | UX250H | レクサス | 622 | 69.2 |
49 | ES300H | レクサス | 608 | 132.5 |
50 | ハイエースW | トヨタ | 606 | 81.9 |
※ 通称名についてはメーカーごとに同一車名のものを合算して集計しています(アルト、ミラ、ムーヴ、eK、ピクシスなど)
半導体、コロナ影響、まだまだ予断を許さない状況が続く
クルマで移動中に聞いていたラジオで、とあるコメンテーターが「明るいニュースとそうでないニュースとでは、そうでないニュースの方に人はより興味をもつ」と言っていた。筆者は実は野球には疎いのだが、それでも海の向こうのオオタニ選手の活躍ぶりは、つくづく超人的だと思う。2021年で数少ない、気持ちが励まされ、晴れやかになる話題だった。2022年は明るいニュースを耳にする機会が増えてほしいものだ……と思う。
さて2021年11月の販売状況を見ると、全体にまだまだ調子がいい訳ではなく厳しい状況だった。12月に入って機会があれば各社関係者に話を聞いていたが、一様に「コロナ禍、半導体問題は続いていて、見通しは何ともいえない。予断を許さない」といった答え。「半導体問題は業界全体、国で早急に取り組んでいくべきこと」といった声も聞かれた。
三菱の好調はエクリプスクロスが牽引
11月の国内販売台数(登録車)を各社発表のニュースリリースに基づいて見ても、トヨタ、マツダ、スバルが前年同月実績を下回った一方で、日産、三菱、ホンダがプラスとなった。とくに三菱は2,191台で、前年比144.6%としたほか、ホンダも前年比103.8%の2万4,367台(軽自動車は前年比81.7%、2万3,022台)、日産(乗用車)も+4.8%の1万7,450台だった。
このうち三菱については、国内生産は2021年4月以来、8ヵ月連続前年比増(100.9%)だったほか、国内販売のほうも同年8月以来、4ヵ月連続で前年比増(107.4%)に。内訳を三菱のリリースから拾うと、エクリプスクロス(ガソリンモデル)の194台/前年比646.7%、ミラージュ303台/同・356.5%などが目に止まる。
フィットとヴェゼルで前年プラスに転じたホンダ
ホンダは登録車で11月は2万4,367台の実績を残し、前年比は103.8%と3ヵ月ぶりにプラスに転じた。販売実績をみると、8位のフィット(6,074台)、10位のヴェゼル(5,381台)などが貢献している。事情、要因はさまざまにあるはずだが、メーカーごとに見ると明暗というにはいささか大袈裟ながら、プラスに転じたメーカーと、まだそこまでに至っていないメーカーとがあるのが実情だ。
トヨタヤリス、ついにカローラに首位を明け渡す
車名別に動向をみると、2020年7月から連続17ヵ月首位にあったトヨタヤリスが2位に退き、代わってカローラが首位の座についた。台数は1万3,631台と10月の7,278台の倍近くの大躍進。おそらくは供給体制が厳しいなかでカローラクロスがいい仕事をした(台数におおいに貢献した)結果の表れだろう。ほかにも10位圏内のトヨタ車では、3位のルーミー(1万1,940台)、ここにきて10月の17位から6位に急浮上し台数もおよそ2.5倍に増やしたヴォクシー(6,711台)が目に止まるほか、ライズ(6,217台)、アルファード(5,423台)が伸びを見せた。唯一アクアが10月の2位から5位に順位を落としているのが気になる。台数自体の落ち込みは少なく、身内も含めて他銘柄の台数の伸びのほうが上回ったということだろう。
ハイブリッド追加で盛り返すダイハツロッキー&トヨタライズ
そのほか伸びの大きかった銘柄としてはダイハツロッキー(3,615台/17位)がある。ハイブリッドは11月1日の発売だったが、10月には50位圏内にはなかったことを考えると、その勢いはかなりのもの。ちなみに兄弟車のトヨタライズも10月の4,064台(11位)から6,217台(7位)へと、ジワリと台数と順位を上げている。
日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝いた日産ノートも健闘
同様に兄弟車とも言うべきトヨタGR86(887台・41位)/スバルBRZ(638台・46位)も、自販連の今回の発表で見ると、ポンと50位圏内に飛び込んできた。両車の台数の比率は今後このくらいで推移していくのだろうか?日本カー・オブ・ザ・イヤーのタイトルにも輝いた日産ノートが11月は4位に順位を上げ、台数も10月の5,502台から9,412台に上げている。そのほかマイナーチェンジ効果が表れたスバルフォレスター(3,975台・14位)や、ここにきてなぜか1,583台と前月の428台から大きく台数を伸ばしたトヨタエスクァイアなども注目される銘柄だ。
軽乗用車販売台数 2021年11月
順位 | 車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | N-BOX | ホンダ | 15,482 | 98.7 |
2 | タント | ダイハツ | 10,822 | 102.1 |
3 | スペーシア | スズキ | 10,790 | 89.7 |
4 | ルークス | 日産 | 7,413 | 82.2 |
5 | ワゴンR | スズキ | 7,267 | 139.8 |
6 | ムーヴ | ダイハツ | 5,979 | 59.9 |
7 | タフト | ダイハツ | 5,613 | 86.3 |
8 | ミラ | ダイハツ | 5,396 | 88.9 |
9 | ハスラー | スズキ | 4,812 | 73.1 |
10 | ジムニー | スズキ | 4,652 | 107.1 |
11 | アルト | スズキ | 4,160 | 73.6 |
12 | デイズ | 日産 | 3,868 | 71.3 |
13 | N-WGN | ホンダ | 3,599 | 81.1 |
14 | eK | 三菱 | 1,906 | 94.5 |
15 | キャスト | ダイハツ | 1,738 | 99.8 |
※ 通称名についてはメーカーごとに同一車名のものを合算して集計しています(アルト、ミラ、ムーヴ、eK、ピクシスなど)
軽自動車の販売状況は厳しさ続く
軽自動車はダイハツが4万4,238台(前年同月比84.2%)、スズキが4万2,331台(同・88.1%)を始め、各社とも前年を下回る登録台数で推移している。軽自動車はより日常生活に寄り添うクルマであるだけに、作る側、売る側だけでなく、ユーザー側の事情も影響しているとしたら、今よりもより豊かに暮らせる社会環境の整備は心から願いたいことのひとつにほかならない。
N-BOX復調、ワゴンRは1ヵ月天下に
とはいえ11月の軽自動車の販売状況は、10月よりも上向いた印象だ。なかでもホンダN-BOXが前月の3位から1位に再浮上。23ヵ月連続の1位とはならなかったが、11月には1万5,482台の販売台数を上げ、本調子に戻ったように見える。2位のダイハツタント、3位のスズキスペーシアも1万台超の販売台数を上げ揃い踏み。4位には日産ルークスがつけているが(三菱eKとともに)懸念材料の影響が今後どうなるかが気になるところ。
前月に1位をとり“スマイル効果”と思われたスズキワゴンRは台数を落とし5位に後退。ダイハツ勢はムーヴ、タフト、ミラが前月より台数を増やし、とくにタフトはライバル車のスズキハスラーに対し順位、台数とも上に立ったが、これは2020年10月以来のことだ。
※記事の内容は2021年12月時点の情報で制作しています。