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島崎七生人しまざきなおと

【日産セレナe-POWER】開発者インタビュー「疲れにくく酔わないクルマ」

【日産セレナe-POWER】開発者インタビュー「パパだけでない、お子さんだけでない、ママだけでもない」
【日産セレナe-POWER】開発者インタビュー「パパだけでない、お子さんだけでない、ママだけでもない」

セレナは家族中心に考えているクルマ

セレナは家族中心に考えているクルマ

島崎:とにかく気になるクルマのお話を開発者の方に伺っているシリーズです。ヨソではお話になっていないような内容は大歓迎ですので、本音の部分も含めて、どうぞよろしくお願いします。

中村さん:本音ですか!? ちょっとドキドキしますね(笑)。

島崎:e-POWERでやっと新型セレナの試乗が叶ったのですが、実車の印象でいうと、スタイリングはガラッと変えたということではないですね。デザインの入江さんのお話では「セレナの代名詞の“シュプールライン”をフロントグリルから外周にグルッと繋げて先代以上にキャビンを長く大きく見せたのが外観の特徴」ということですが……。

中村さん:はい、正常進化です。

島崎:1番の狙いといいますと?

中村さん:セレナは家族中心に考えているクルマです。パパだけでない、お子さんだけでない、ママだけでもない。家族が中心。そこがお客様に認知され、ご好評をいただいていると考えているので、ご期待に応えたい。

島崎:なるほど。

中村さん:パパが見てもかっこいい。ママが乗っていてもギラついている感じがしなくて乗りやすいというか。お子様にも「このクルマ大好き」と言ってもらえる。バランスのいいデザインにも仕上がっていて、先代もその前もそうでした。そうした受けているところをご提供したい。そういう思いが強く、あえて奇をてらわずに正常進化をさせました。

ヴォクシーはオラオラ、ステップワゴンは色味がない

ヴォクシーはオラオラ、ステップワゴンは色味がない

島崎:そこでちょこっとだけ突っ込ませていただくと、他銘柄も同じように“家族みんなのクルマ”として訴求している気がします。どこが違うのでしょう?

中村さん:みんなのクルマという意味では、ミニバンなのでそうですね。けれど、そこでたとえばデザインでいうと、どなたに向いたテイストが強いですか?というところがあると思うんです。

島崎:ほほう。

中村さん:たとえばトヨタさんのヴォクシーだとオラオラッとした感じが旦那さん向け。ホンダさんのステップワゴンはもっとニュートラルでナチュラルな感じで、誰にでも受け入れられるのではあるのですが、プレーンでやや色味がないかな、と。

島崎:確かに。

中村さん:“私はこういうクルマに乗っています”という気持ちは少なからず人にはある。それぞれ家族中心ではあるんですけど、たとえばトヨタさんだとパパと息子の2人乗りもアリですよ、といった売り方をされていたりもする。

島崎:かつて。パパは反町隆史だったりしましたね。

中村さん:そのように、どういう家族の乗り方をするかの比重の違いが各車にはあると思うんです。

島崎:そのお話を聞いて思い出したのですが、知人でBMWに乗っているファミリーがいまして、納車時に旦那さんは嬉しそうにMスポーツのシンボルの水色/青/赤のステッカーを早速キドニーグリル付けたのですが、奥さんに聞くと「あれは恥ずかしい」と。

中村さん:そうなんです。やっぱり男性と女性とでは好みの違いがある。我々セレナはそのちょうどいいバランスをとれているかな、と思っています。

島崎:そのちょうどいいバランスをとるためにどうしたのですか?

中村さん:日産自動車では、まず“家族全員の”とコンセプトを掲げて、ターゲットになるお客様をどういう家族構成でどういう人たちかを深堀りしていきます。新型セレナでは4人家族を設定して“杉浦さん”と名前もつけました。

島崎:杉浦さん一家?

中村さん:はい。その杉浦家族の年齢、どこに住んでいるかなど個人をイメージしやすいところまで設定していきました。ひと口に4人家族といっても、お子さんが中学生か幼稚園か、いろいろなので、商品企画がこういう家族を考えています、とフォーカスしていき、開発メンバーやデザイナーに伝えていく。で、こういうクルマを作りたいといえば、あ、こういうことね……と意志疎通が図れる。メンバーは日本市場の中でセレナをずっと見ているので、意図を酌んでもらえ、そこからデザインも作り上げてくれた。

疲れにくく酔わないクルマを目指した

疲れにくく酔わないクルマを目指した

島崎:その手法をやってこられて、先代と新型とでは何か大きく違うことはありましたか?

中村さん:先代の頃は購入の決定権も含めてママが中心でした。なので誰にササる特徴を持たせるかといえば、やはりママ向けに気配りのある装備を載せました。新型もそれはしていますが、今回はパパもママもみんな平等で一緒に楽しむためにどうしたらいいか?を考えることにし、疲れにくく酔わないクルマを目指せばいいと。家族全員に「いいクルマだね、これにしようよ」と言っていただけるクルマにしたのが先代と新型との違いです。

島崎:酔わないクルマ、ですか?

疲れにくく酔わないクルマを目指した

疲れにくく酔わないクルマを目指した

中村さん:はい。酔わないようにするために、ステアリングを切った時にキュッと傾いてしまうと、セカンドシートに乗っているお子様は体重が軽いので、頭が振られてしまう。そうすると気持ち悪くなるので、そうならないようにセッティングしてあります。

島崎:気配りのセッティングですね。ちなみにお子様自身は、乗り心地の善し悪しはわかるもの、気がつくものでしょうか?

中村さん:それはコンセプトの話に戻りますが、どうやったら楽しいのか?というと、そこに起点します。酔った経験のあるお子さんはたくさんいらっしゃる。あるデータでは6、7割という。で、酔えば当然楽しくないし、それを見ているパパもママも辛いから楽しくない。酔わないということを追求すると、楽しいということができる。頭が動かないようにするゼログラビティシート、身体をしっかりと支えるシート形状、それとロールスピードを緩やかにしているところがポイントです。

プロパイロット2.0を搭載する覚悟

プロパイロット2.0を搭載する覚悟

島崎:e-Pedalの特性も随分変わりましたね。アクセルを抜いていくと、停止までいかなくなった代わりに減速がとてもゆるやかに操作できるようになりましたね。

中村さん:なめらかになっていると思います。頭がなるべく前にカックンとならないようにしました。e-POWERはモーターの出力なのでアクセル操作に対する感度が非常にいい。なので、先代に対してはモーターの魅力は出しつつ違和感のないようにと、相反することのチューニングをエンジニアが徹底的にやってくれました。

島崎:1ペダル操作でアクセルを抜く時の力加減がものすごく自然になりましたね。

中村さん:ありがとうございます。どなたに運転していただいても扱いやすいクルマにという思想です。

プロパイロット2.0を搭載する覚悟

島崎:プロパイロットの働き方も、そうとう自然になり、扱いやすくなりましたね。

中村さん:それは我々も進化させました。スカイライン、アリアと代を追うごとに、いろいろなシーンやお客様の声をいただき蓄積されたデータがありますし。

島崎:目を逸らした時に出る“前を向いてください”の警告も実に絶妙な間合いで。あまりに的確だったので、思わず自分の生き方についての示唆かも……と思ったほどでした。

中村さん:ははは、常に前を向かなきゃいけない、ポジティブにと。皆さんが知ってくださっている大きなブランドで、日産の販売構成の中でもコンスタントにボリュームをもっているセレナで、プロパイロット2.0を搭載するのはその覚悟でやっていますので、日々の進化が上手く反映できているかなと思います。

アルファードでは少し大きいし……という人向けのLUXION

アルファードでは少し大きいし……という人向けのLUXION

島崎:“ものより思い出”なんていうCMのコピーもありましたが、セレナはブレずに進化してきましたね。ところで車両説明のなかで、エスティマ、オデッセイの車名も挙がっていましたが、今やセレナがライバル視しているということでしょうか?

中村さん:新設定のLUXION(ルキシオン)というグレードは、価格が480万円でハイウェイスターよりも高いのですが、400万円を超えるMクラスのミニバンはないんですよね。そうするとLクラスの価格帯に入ってくるので、お客様のバジェットで見るとそこに入ってくるので、それを見据えたクオリティ、設えをその価格に見合った価値のあるものにしたということです。アルファードでは少し大きいし……と行き場のなくなったお客様に……。

島崎:エルグランドもありますが……。

中村さん:あ、エルグランドにも行っていただきたいですが、ちょっと大きいというお話があった時に、プロパイロット2.0も付いていますよ……と、LUXIONをショッピングバスケットに入れていただけていまして。

島崎:LUXIONは3ナンバーなんですね。

中村さん:ハイウェイスターVとルキシオンは3ナンバーです。ただ5ナンバーも残しているのがセレナの特徴です。やっぱり5ナンバーサイズのクルマしか入らない駐車場をお持ちのお客様も日本には1割くらいいらっしゃいます。そういった方にもオススメできるように……。先代とディメンジョンはあまり変わっていません。

島崎:気配りですね。

中村:すべて家族の方に乗りやすいように、知恵を結集しました。

デュアルバックドアは何としても残す

デュアルバックドアは何としても残す

島崎:今回、ロードインデックスの話で、新しいタイヤ負荷率に基づいて乗員1人が55kgから75kgの計算になっていますが、そのあたりのお話はありますか。

中村さん:ええ、限られた駆動力で乗り心地と走りを両立させて快適さも確保してということで、結構大変だったとは思いますが、私が誇っているプロのエンジニアの集団ですので、黙って対応してくれています。

島崎:黙って……。昨夜、徹夜で原稿を書いていてさぁ……などと、もう言わないようにします。それとデザインについては、中村さんから何か注文を出されたことはあったのですか?

中村さん:デザインについては本当に狙いどおりに作ってくれました。先代はプロパイロット1.0 やe-POWERを出して技術のイメージが高まり、セレナのひとつの強みになりました。このことをデザインにも反映してほしい、先進的なイメージを入れてほしいというオーダーは出しました。結果その通りにしてくれましたし、家族中心なので親しみやすさも感じるデザインにしてくれました。3つの縦のランプの中にシグネチャーのVモーションが入っていたりする演出は、先進感のエッセンスになっています。

島崎:ガソリン車はすでに街中で見かけますが、なかなか印象的ですよね。先代と似ているかな?と思っていましたが、やはりずいぶん違う。

中村さん:今までにない先進感が出せたと思っています。

島崎:その一方で、実用面でいうとデュアルバックドアは、新型でも残す判断をされたのですね。

中村さん:はい。あれは何としても残す、と。先代の時の開発メンバーの提案でしたが、日頃使うにあたり、通常のバックドアはやはり大きくて重い。狭いと使いづらい。それがデュアルバックドアなら非常に使いやすいと好評をいただいていましたので、これはもう残さないと、と。

日頃の使い勝手を高める改善点は、いーっぱいあります

日頃の使い勝手を高める改善点は、いーっぱいあります

島崎:そのほかに新型セレナのここは!というアピールポイントはありますか?

中村さん:セレナらしい細やか使いやすさとしてUSBが全席に付いていますとか、パーソナルテーブルと呼んでいますが、折り畳み式のテーブルをサードシートまで付けました。それとサードシートのクッションの厚みを確保して快適に過ごしていただけるようにもしまし、サードシートをスライド式にし、使い勝手も高めました。サードシートの位置はどのメーカーさんも苦労されていますが、サードシートは窮屈なのでなるべく後ろに下げたいですが、そうすると荷室容量がなくなってしまうジレンマがある。我々はどちらも大切だよということでスライドできるようにしました。日頃の使い勝手を高める改善点は、いーっぱいあります。

(ここで広報の清水淳さんが登場されて)

島崎:清水さんがテーブルにいらしたので、そろそろあと5分ぐらいでまとめなさい、ということですね。

清水さん:いえいえ。

島崎:ではあとひとつ。ボディカラーで1色、漢字の日本語で“利休”とされたネーミングと色、奮っていますね。

日頃の使い勝手を高める改善点は、いーっぱいあります

中村さん:インパクトありますでしょ? 新しい色なので、覚えていただきたく、茶室の土壁からインスピレーションを受けた色ということから、ネーミングを考えました。

清水さん:日産には漢字の色は結構多くて、アリアにも、日が昇る時の空の色ということで“暁カッパー”とかあります。

中村さん:インスピレーションを受けたものによるんです。暁も日本の風景からですし、利休も同じようにインスピレーションからいただいた。お客様にも伝わりやすく覚えていただきやすいのではないかと思います。ほかにも明るい色も選んでいただける状況を作れたのも私は嬉しいかなと思っていますが、ご家族でこの色がいい、あの色がいいとご家族で会話を弾ませていただきたいです。CMも技術だけでなく、家族みんなで喋りながら歌いながらと、我々がお届けしたいコンセプトをそのまま表現できているかなぁと思います。それとe-POWERで8人乗りも出しましたし、他車はどちらかの選択になりますが、シートアレンジでキャプテンシートの7名乗りのような使い方も可能にしたソリューションもご提供できています。その日の気分でお子様がきょうは2列目に乗りたい、3列目に乗りたいとなっても大丈夫です。

島崎:ものすごく家族思いのクルマだということがよくわかり、お話を聞いているこちらも気持ちがホッコリしました。どうもありがとうございました。

(写真:島崎七生人、日産)

※記事の内容は2023年8月時点の情報で制作しています。

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