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島崎七生人しまざきなおと

【ホンダアコード】フラッグシップにはいろいろな技術を投入する〜開発者インタビュー

【ホンダアコード】フラッグシップにはいろいろな技術を投入する〜開発者インタビュー
【ホンダアコード】フラッグシップにはいろいろな技術を投入する〜開発者インタビュー

その細やかな観察眼では業界一、二を争うモータージャーナリストの島崎七生人さんが、話題のニューモデルの気になるポイントについて、深く、細かくインタビューする連載企画。第74回は2024年3月8日に発売されたホンダ「アコード」(544.94万円)です。1976年の初代登場から今回で11代目となるホンダを代表するセダンについて、本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センター アコード開発責任者の横山 尚希(よこやま・なおき)さんにお話を伺いました。

アコードが大事にしてきた “低位感”

アコードが大事にしてきた “低位感”

島崎:昨年9月、事前の取材の機会にお話を伺った際、「アメリカで乗ってとても楽しかった」とご自身で仰っていたのが印象的でしたが、やっと試乗ができ、そのことが確かめられました。

横山さん:ああ、覚えていていただいてありがとうございます。

島崎:箱根で試乗ができ、「ああ、なるほどね」と素直に思えました。で、いきなりですが、今どきのクルマとすると、燃費はもちろんですが、まず環境対応とか、もっといえば動力源は何なのかといった話が最初に来ると思いますが、あえて“走り”を最初に挙げているのは、何か意図があってのことですか?

横山さん:やはりホンダのクルマは走りを大事にしています。ブレーキ、ステアリングなど、いろいろな技術を含めていい走りを提供したいというのが根本にあります。

島崎:なるほど。

横山さん:アコードに相応しい走りは何か?というと、もともとアコードが大事にしてきた動的性能というと、“低位感”と言っているんです。これはしっかり定まった低いヒップポイントで、しっかりしたグリップ、接地感があって、ステアリングを切ってもしっかり頭が入っていきながら姿勢の安定性も重要視している。このあたりの、アコードとしての正常進化を果たせたかなと思っているのが今回の新型になります。

アコードがアコードであるが故の宿命

アコードがアコードであるが故の宿命

島崎:先代も走りということでは、なかなかいいクルマでしたよね。なので試乗前はそんなに違わないのかなとも想像していましたが、だいぶ違いますね。

横山さん:ありがとうございます。技術の進化と相まって、できるものが増えてくるんです。

島崎:できるもの?

横山さん:たとえばハイブリッドシステムもかなり進化して、加速性能とか静粛性も進化しています。モーションマネージメント、ABSもかなり進化していて、乗り心地とか操安にもかなり効いています。乗り味って、ここはこうだよと、なかなかわかりづらいのですが、乗った時にスッキリしていて、しっかりと低位がキープできていて、しっかりグリップしながら安定して走っていく。そういったことを感じていただけるとしたら、それは技術の進化によるものだと思います。

島崎:要素技術というのは、それぞれのご担当の方の発案から採用になっていくものなのですか?

横山さん:我々は機能開発という部署があって、たとえばブレーキ性能はその部署でその機能を司り、進化を含めていろいろ考える。他車がこういうブレーキを使っている……と調べながら、自分たちはどう進化したらいいのか考える。で、アコードのこのタイミングでは、こういう技術を投入することで競争力のある性能を出しますよ、とそういうことを開発チームで束ねながら1台のクルマに仕上げていくわけです。

島崎:今はこのアコードが事実上のフラッグシップになる訳ですが、そのあたりも意識されていたことだったのですか?

横山さん:そうですね。アコードは日本のフラッグシップであり、アコードは昔からホンダの中でも収益も含めた大事な旗艦機種でもあります。いろいろな機能開発をしている部署が、アコードにめがけていろいろな技術を投入する計画を持っています。それらを取りこぼさずしっかりアコードに載せていく。アコードがフラッグシップになれるためにも、そういうことは大事かなと思います。

島崎:自宅に昔からのクルマのカタログを保管している資料部屋があるのですが、1976年に登場した初代のアコードのカタログを改めて見ていても、あの頃からアコードというと、ちょっと先進的な位置づけのクルマだったのかなぁと思いますが。

横山さん:アコードの歴史は、もともと人々のゆとりと環境との調和を目指して生まれ、さらにそこに、時代に先駆ける技術を入れてきて成長して、グローバルになった。アコードがアコードであるが故の、そこはある意味で宿命なのかな、と。

エンジンとモーターは得意不得意がある

エンジンとモーターは得意不得意がある

島崎:横山さんは、もともとエンジン畑のご出身なんですね?

横山さん:もともとエンジンが凄く好きで、燃焼を変えて環境に貢献したいという思いでホンダに入りました。2013年モデルのアコードでホンダ初のサイドマウントのストイキ直噴システムが出せたのですが、当時はリーンバーンだとNOxとか出てしまうところを、より環境性能を向上させる技術がサイドマウントでした。このエンジンが出せて、自分の夢も一つ叶ったんです。

島崎:そうでしたか。

横山さん:その後もEURO6対応のPM(粒子状物質)/PN(排出粒子数)を減らすためにどうするかをこの直噴システムを使いながら研究し、先代アコードの1.5Lターボではエンジンのプロジェクトリーダーを務め、今度のアコードではエンジン設計から入ってパワートレイン領域の開発責任者を経て、アコード全体の開発責任者になりました。

島崎:まさにエンジン屋でいらしたのですね。

横山さん:ええ、もう生粋の(笑)。

島崎:2003年の中途のホンダご入社だそうですが。としますと、別の会社の別のエンジンも手がけていらした?

横山さん:そうですね。筒内流れとか、CFDといってコンピューターの流れ解析をやりながら、どういう誘導にしたら燃料を上手く乗せてきれいに燃えるか、そういう製品開発をしていました。

島崎:今のお話は、ピンと来る方にはピンとくるお話ですね。

横山さん:筒内の流れがクルクルしているヤツ、空気がどう流れているんだ、という……。

エンジンとモーターは得意不得意がある

島崎:今回のアコードでいうと、エンジンは横山さん的にはどういうエンジンということになりますか?

横山さん:シビックで刷新されたエンジンに対して今回アコード用に諸元が変わっていて出力も上がっているのですが、もともとシビックで作った新しい骨格は、燃費のいい領域がより広がっている。大量のEGRを入れながら燃費を稼ぐ。そうするとホンダでいうところのエンジンドライモードが幅広く使えるようになるんです。

島崎:とすると?

横山さん:たとえば高速道路でロックアップでトルクが必要になりアクセルを踏むと、1回ロックアップが切り離されてハイブリッドモードになるところを、エンジン直結モードが幅広くなったことで、少しアクセルを踏んでも抜けずに直結のままにしておけるので、応答性もよくなり、燃費を稼げる領域も広がっている。エンジンはかなり進化していると思います。

島崎:さらにEVモードが大幅に加わった訳ですが、そのあたりはどうでしょう?

横山さん:エンジンにはどうしてもトルクカーブがあって、低回転ではどうしてもトルクが出ないのは物理的にそうなんです。そこをしっかりモーターで助けてあげられるのがハイブリッドの強み。エンジンだけだと成し得ないことが、モーターと組み合わせることで走りにも貢献できるシステムになるんじゃないかなと。エンジンとモーターは得意不得意があるので、そこを分担したり、時には掛け合わせながら上手く使えるシステムだと思います。

自分の運転が上手くなったんじゃないかと思える

自分の運転が上手くなったんじゃないかと思える

島崎:横山さんも実車を走らせて、そういった“旨みは実感されているのですね。

横山さん:もちろんパワートレインだけではなく、シャシー技術の進化も大きいです。モーションマネージメントもそうですし、減速パドルとの組み合わせのところもすごく楽しいですし。

島崎:タイヤが路面に吸い付いている感覚がしっかり伝わってくるのがいいですね。

横山さん:アコードの低位感、アンダーステアの出にくさで、思いどおりのラインがトレースできる。あたかも自分の運転が上手くなったんじゃないかと思えるような……。

島崎:僕もそう思いました(笑)。

横山さん:そんな挙動を示してくれるところを楽しんでいただけるのではないかな、と。

自分の運転が上手くなったんじゃないかと思える

島崎:ステアリングの操舵感でいうと、たとえばシビックが“スッ”という感覚だとすると、このアコードは“スゥーーッ”という感じ。それは車格、クルマの違いで狙ったところなのですか?

横山さん:うーん、シビックはスポーティなモデルなので、スッキリ感を強く求めているのかも知れません。アコードもグローバルモデルですが、北米でハイウェイを楽に安全に走るコンセプトを持っていて、ステアリングにも楽に運転できる感覚を加味しています。ただワインディングでもスポーツモードを用意して、操舵力は少し重くなりますが、クイック感が味わえるセッティングにしています。シビックとの違いとしてはツーリングカーとしての味付けをしてきたところです。

アダプティブダンパーがもたらす別世界の乗り心地

アダプティブダンパーがもたらす別世界の乗り心地

島崎:そうそう、それと乗り心地は非常にいいですね。フラットライドで、タイヤがミシュランということもありNVHがスッとキレイに消えていて、本当に神経が逆撫でさせられずに走らせていられますね。

横山さん:ありがとうございます。このクラスでアダプティブダンパーが入っているのはあまり多くないと思います。なのであの性能が高く寄与していて、これまでは3軸制御でしたが今回は6軸制御にしたことで、クルマのより緻密な制御が可能になったのもかなり効いているはずです。

アダプティブダンパーがもたらす別世界の乗り心地

島崎:足が突っ張って感じるところがどこにもなく、サスペンションのストローク自体は変わってないそうですが、タイヤとダンパーのいい仕事とで、なにしろ別世界の乗り心地だなぁ、いいなぁと思いました。

横山さん:ありがとうございます。高速道路は試されましたか?

島崎:いいえ、平日ですが箱根界隈も海外からの観光客の方々が多くて、道路の混み具合が読み切れなかったので、あまり足を伸ばさずに時間どおりに戻ってこれることを優先したもので。別の機会にまたゆっくりと味わわせていただこうと思います。そういえば日本仕様独自といいますと?

グーグルの音声認識機能って実は凄い

グーグルの音声認識機能って実は凄い

横山さん:北米仕様にもグーグルは入っていますが、セレクションダイヤル、バイザーレスのマップインメーター、インフォテイメント系、それとHonda SENSING 360の組み合わせは北米にはありません。

島崎:僕は昭和なアナログ人間なので、先日もどれかの試乗車で発話したら「何を言っているのかよくわかりません」と言われてしまいあたふたしましたが、使いこなせれば便利でしょうね。

横山さん:グーグルの音声認識機能って実は凄いんですよ。OEMで使わせてもらい、そういうプラットフォームと情報共有しながらだとメリットが大きいんです。馴染んでいる方ならスマホとクルマがシームレスで使え、クルマとの連携もできる。ナビも経由地を追加したければ「近くのコンビニ」といえば途中で案内してくれますし、トンネルに入って電波をロスしても、車速センサーを使い自車位置を推定しているので、ローカルマップとの特定精度も高いです。携帯電話に較べ発話で全部できるのでむしろ使いやすいと思います。「オッケイ、グーグル!」というのが恥ずかしい人でもボタンを押せばウェイクアップしてくれますし。

島崎:発話するのが恥ずかしい……そこは非常に助かるところだと僕も思います。いろいろなお話をお聞かせいただき、どうもありがとうございました。

(写真:島崎七生人)

※記事の内容は2024年4月時点の情報で制作しています。

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